レビュー
本書『「新」富裕層ビジネスの教科書』は、著者・岸田大輔氏が1000人以上の富裕層と向き合ってきた経験をベースに、富裕層との信頼構築、営業手法、マーケティングの極意を解説した一冊です。単なる「富裕層向けの高級サービス」にとどまらず、富裕層の価値観、行動心理、人間関係の築き方までを深く掘り下げており、営業職・マーケター・経営者にとって実践的なヒントが詰まっています。
著者は、クレジットカード業界で富裕層ビジネスに従事し、名もなき新人時代から着実に信頼関係を構築していった人物。そのリアルな経験談を交えながら、「富裕層には売ろうとしない」「紹介のされ方が大事」「営業は焦ると終わる」といった現場でしか得られない“生の知恵”を展開しています。
特に注目すべきは、第4章で解説される「新富裕層を惹きつける10のキーワード」。富裕層が心を動かされやすい価値観(信頼、学び、時間、共感、希少性など)を軸に、マーケティングのフレームワーク「カテゴリー×カテゴリー×キーワード」で体験価値を設計する方法が紹介されます。
また、新旧の富裕層を見分ける視点もユニークです。旧富裕層は物質的で格式を重んじる一方、新富裕層はシェアやストーリー、個人の体験に価値を見出します。著者はこの違いを理解することが、提案の精度を高める第一歩になると説きます。
最終章では、富裕層と仕事をする魅力と学びが綴られています。高圧的なイメージとは異なり、実際の富裕層の多くは謙虚で学びに貪欲な人たちであり、対等な人間関係を求める傾向があるという洞察には、営業やサービス提供における姿勢の再考を促されます。
✅ 要点まとめ
- 富裕層マーケティングは「内面理解」が出発点
- 「旧富裕層」と「新富裕層」では価値観が異なる
- 営業では焦らず、信頼構築に徹することが成功の鍵
- 新富裕層を惹きつける「10のキーワード」が有効
- 感動体験は「カテゴリー×カテゴリー×キーワード」で設計する
- 富裕層は“モノ”より“時間・体験・共感”に投資する
- 「あなただから任せたい」という関係性が最重要
- 富裕層との関係は営業ではなく「伴走」の姿勢で築く
読後の感想
本書は一見、「富裕層向けのビジネス指南書」と見られがちですが、読み進めるうちにその本質が「人間理解の教科書」であることに気づかされます。富裕層というフィルターを通して、人は何に価値を見出すのか、信頼とは何か、どうすれば人の心を動かせるのかといった問いに向き合える構成です。
特に印象に残ったのは、「売るな、信頼されろ」という一貫した姿勢です。著者自身が、売れずに苦しんだ日々の中で学んだのは「商品ではなく、人を買ってもらう」ことの重要性。そしてその“人”とは、相手の価値観を理解し、共に考え、寄り添える存在であるべきだという点に、筆者の人間観とプロ意識が滲み出ています。
「10のキーワード」や「カテゴリー×キーワード」の考え方は、マーケティングの実務においても応用可能です。たとえば、高級品を扱うブランドに限らず、教育業界やBtoB営業においても、“相手のストーリーに沿った提案”を心がけるだけで、成果が変わる場面が多くあると感じました。
また、本書の魅力は、机上の理論ではなく“現場の体温”が感じられる点です。紹介の重要性や、失敗例、VIP対応でのリアルな裏話など、成功本ではあまり語られない「地道な努力と工夫」が記されており、現場感を持つ読者にとって非常に共感できる内容となっています。
一方で、「再現性のある設計」に乏しいと感じる読者もいるかもしれません。本書はノウハウ集というよりは、「現場でどう在るべきか」を示す哲学的な一冊でもあるため、仕組み化やスケールを重視する読者にはやや抽象的に映る可能性があります。
おすすめ読者
👤 この本をおすすめしたい人
- 富裕層向けの営業・企画に携わる人
- 信頼構築型ビジネスを目指すすべての営業職
- マーケティングやブランディング担当者
- “売る”より“選ばれる”存在になりたい人
- 富裕層の行動心理に興味がある人
⭐ 総合評価(5段階)
| 視点 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 実用性 | ★★★★☆ | 即効性のあるTipsが多く、現場で活かしやすい |
| 読みやすさ | ★★★★★ | エピソード豊富で文章も平易。すらすら読める |
| 独自性 | ★★★★☆ | 富裕層の心理にここまで踏み込んだ本は希少 |
| 汎用性 | ★★★☆☆ | BtoC営業に強いが、設計志向の読者にはやや不向き |
| 満足度 | ★★★★☆ | 実践的+哲学的な学びがあり、深く刺さる人には刺さる |


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