『話し方の戦略―「結果を出せる人」が身につけている一生ものの思考と技術』(千葉 佳織 著)

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レビュー

「話し方に才能はいらない。必要なのは“戦略”である」──このシンプルかつ力強いメッセージを軸に展開される本書『話し方の戦略』は、スピーチライター・千葉佳織氏の初著書であり、実践的かつ体系的に「伝える力」を磨くための指南書です。

本書では、「話すこと」は一種のスキルであり、属人的な感覚やセンスに頼るものではないという前提から始まります。著者は、自らが代表を務める「話し方のジム」での実践経験をもとに、効果的に伝えるための思考法と技術を章立てて丁寧に解説しています。

内容は大きく3部構成で進行します。
第1部では、「伝わる」ための3原則──目的の明確化・相手の理解・言葉の最適化──を提示。

続く第2部では、「言葉の戦略」として、メッセージの要約力、話の構成、ストーリー性、ファクトの活用法、レトリックといった実践テクニックが紹介されます。

そして第3部では、「非言語的要素」──声、沈黙、身体表現といった印象操作の技術にも踏み込みます。

特徴的なのは、すべての要素が「再現可能な手順」として整理されている点です。話し下手な人も、何を・どこで・どのように改善すればよいのかが明確になる構成で、理論だけでなく即実践につなげられる工夫が随所に見られます。

会議・商談・面接・プレゼン・スピーチなど、日常のあらゆる「伝える」場面に応用可能な汎用性の高さも魅力です。加えて、著名人の実例やスピーチ分析なども豊富に含まれており、内容に深みと説得力を与えています。

読後の感想

読み進めるうちに「話す」という行為の奥深さと、背後にある設計力の重要性に何度も気づかされました。特に印象に残ったのは、「話す前」にすでに勝負が始まっているという考え方です。
単に話し方のテクニックを並べるだけでなく、「何のために話すのか」「聞き手は誰か」という視点をもつことの大切さが一貫して語られており、実際のコミュニケーションにおける応用可能性が非常に高いと感じました。

著者の語り口は理論的でありながら押しつけがましさがなく、読者の自己理解を促しながら「自分の話し方にどんな課題があるか?」を自然と考えさせる構成になっています。たとえば「ファクト」と「ストーリー」の使い分けや、印象的な一言=レトリックの効果など、感覚で済まされがちな要素が丁寧に整理されている点も非常に実用的でした。

また、非言語要素――声の出し方、沈黙の使い方、身体表現――にまで踏み込んでいる点は特に秀逸です。これらは自己表現の土台でありながら軽視されがちであり、本書ではそれぞれが「信頼を勝ち取る技術」であると明確に位置づけられています。話すことは“演じる”ことではなく、“信頼を伝える行為”であるという視点は、対人関係やビジネスにおける説得力の本質を突いています。

総じて、本書は「話す力」を伸ばしたいすべての人にとって価値ある一冊です。
新入社員からマネージャー、講師、営業職、起業家、政治家まで、立場や職種を問わずおすすめできる内容であり、まさに“一生モノ”のコミュニケーション技術を学べます。

こんな人におすすめ

  • プレゼン・営業・会議で「伝え方」に課題を感じているビジネスパーソン
  • 話し方に自信がなく、どこを直せばいいのか分からない人
  • ストーリー性のあるメッセージを伝えたい起業家や講師
  • 面接・スピーチ・動画配信などで「伝える力」が問われる方
  • 自己流から脱却して、戦略的に話す技術を身につけたい方

総合評価(5段階)

項目評価
内容の網羅性★★★★★
実用性★★★★★
読みやすさ★★★★☆
独自性・切り口★★★★★
初心者への親和性★★★★☆

総合評価:4.7 / 5.0

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この記事を書いた人

私は、経営コンサルタントとして、ビジネスの実践現場で活動しています。現場で「使える知識」として再構成し、“読む → 学ぶ → 行動する” までのビジネスプロセスをサポートしています。

このブログでは、そのようなコンサルティングの経験を通じて、役に立ったビジネス書を紹介します。おすすめ書籍の要約や感想だけでなく、実際に成果につながるエッセンス・行動アイデア・思考法を解説します。「この一冊を読んでどう変わるか?」にこだわったレビューを発信しています。

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