レビュー:~初心者にこそ手に取ってほしい「投資の新常識」~
本書『転換の時代を生き抜く投資の教科書』は、元日本経済新聞の記者であり、現在はSNSやYouTubeで経済情報をわかりやすく発信する後藤達也氏による、初の著作です。経済初心者・投資初心者にとって、「なぜ今投資が必要なのか」「投資を始めるには何を知るべきか」を極めて平易な言葉で丁寧に教えてくれる、まさに「教科書」的存在です。
著者は、現代の日本が直面する構造的な課題──新NISA制度、円安、インフレ、長寿化社会──を背景に、「投資はもはや一部の富裕層やプロのものではない」と明言します。これからの個人は、日々の生活と資産形成の両方を見据えた経済的判断力が求められる時代に突入しており、その最も有効な手段が「教養としての投資」なのです。
構成は非常に実践的でありながら、読みやすさに配慮されており、たとえば「株って何?」という初歩の話から始まり、PER・決算・バランスシートなどの分析手法、中央銀行の金融政策と株価の関係、さらには長期投資の戦略や海外投資の注意点まで、幅広くカバーしています。
特筆すべきは、比喩やたとえ話の巧みさです。株式上場をヤフオクへの出品にたとえたり、投資の視点を「虫の目・鳥の目・魚の目」と表現することで、抽象的で難解に思える経済の話を、読者が直感的に理解できるようになっています。
要点リスト(まとめ)
- 現代は「投資せざるを得ない」時代。円安・インフレなどが生活に直結。
- 株式投資は経済・社会との接点を持つ行動であり、単なるお金儲けではない。
- 株価は未来予測で決まる。決算書を読み解く力が重要。
- 投資分析には「虫の目・鳥の目・魚の目」の三視点が必要。
- 中央銀行(例:日銀・FRB)の政策は市場に強い影響力を持つ。
- 投資の始め方は「目的を明確にすること」が第一歩。
- 長期投資と低コスト意識が個人投資家の武器になる。
- 外国資産には為替リスクがつきもの。為替の知識も不可欠。
- 投資は「お金を増やす」だけでなく「視野を広げる教養の投資」にもなる。
感想~投資とは「お金」よりも「視野」を広げる行為~
読後にまず感じるのは、投資という行為がいかに「お金儲けの手段」だけでなく、「世界の仕組みを理解する教養」なのか、という点です。著者は決して煽ったり、高リターンを誇張することなく、非常に誠実なトーンで語ります。
印象に残ったのは「若いうちからの投資経験は、生涯の資産形成の武器になる」という言葉です。これまで投資に対して距離を置いていた人や、不安を感じていた人にとって、「難しくない、むしろ知っておくべき」という姿勢が伝わってきます。
また、世界経済や金融政策など、個人ではコントロールできない要因が投資には大きく関わってくるというリアリズムも描かれており、「投資とは確実な世界ではない」という正直な視点が読者に安心感を与えてくれます。
長期的に見れば、投資はただのマネーゲームではなく、思考を深める手段でもある。本書はそのことを繰り返し示しており、知識としてだけでなく、価値観としての「投資観」が得られる一冊でした。
こんな方におすすめ
✅ 投資を始めたいが、何から手をつけていいかわからない人
✅ 新NISA制度に興味はあるが、仕組みが理解できていない人
✅ お金の教養を身につけたいビジネスパーソン
✅ 難しい投資本に挫折した経験のある人
✅ 若い世代(20〜30代)で、将来に不安を感じている人
評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★★★★(初心者向けに極めて平易) |
| 実用性 | ★★★★☆(基礎知識中心。応用編は別途必要) |
| 情報の正確さ | ★★★★★(元記者らしく精緻で誠実) |
| デザイン・構成 | ★★★★☆(視覚的ではないが構成は明快) |
| 総合評価 | ★★★★★ 4.7 / 5.0 |


コメント