『こうやって、頭のなかを言語化する。』 (荒木俊昌 著)

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レビュー

「自分の考えをうまく言葉にできない」「話している途中で何を言いたいのかわからなくなる」――そんな悩みを抱える人は多い。本書『こうやって、頭のなかを言語化する。』は、そうした“モヤモヤした思考”を整理し、伝わる形に変換する「言語化の技術」を解き明かした一冊である。著者の荒木俊昌氏は、心理学・コーチング・ビジネス戦略を背景に、思考を明確にするプロセスを体系化している。

本書の最大の特徴は、「言語化」を単なるテクニックではなく、自己理解と他者理解をつなぐ思考習慣として捉えている点にある。言葉を整えることは、同時に自分自身を整理する行為であり、内面の明確化と対人関係の改善を同時に進める道でもある。

第1章では、言語化力が高い人の共通点を解説。彼らはまず、「仮の言葉」で考えを出すことから始める。完璧な表現を求めて黙り込むのではなく、話しながら精度を上げる。その柔軟な姿勢が、思考を豊かにする鍵となる。
第2章では「自分を聴く力」を磨く重要性が語られる。感情の動きを丁寧に拾い、「なぜそう思うのか?」と問いかけることが、深い言語化につながる。
第3章・第4章では、実践的なメソッドとして「三層構造フレーム」と「言語化ノート術」を提示。主張・根拠・具体例のフレームで思考を構造化し、ノートに自分との対話を書き出すことで、頭の中をクリアに整理できる。
最終章では、言語化を“体質化”するための習慣化方法を紹介。日常的に「書く・話す・聴く」を繰り返すことで、自然と考えが整理され、伝える力が磨かれていく。

本書は、自己表現だけでなく、思考の深さと他者との共感を両立させる「言葉の筋トレ本」と言えるだろう。

要点

  • 言語化は「思考の可視化」であり、自己理解の手段。
  • 「話しながら考える」姿勢が大切。
  • 感情を無視せず、「なぜそう思うか」を掘り下げる。
  • 主張・根拠・具体例の構造化で思考を整理。
  • ノート術で「問い」と「答え」を書き出す。
  • 習慣化により「言語化体質」をつくる。

 感想・評価・おすすめポイント

読了後にまず感じるのは、「言語化とは才能ではなく、トレーニングで身につく力だ」という確信である。荒木氏は「書くことで考える」「話しながら考える」という姿勢を強調し、言葉にする過程そのものが思考の深化を促すことを繰り返し説いている。このアプローチは非常に実践的で、完璧主義に陥りがちな現代人にとって大きな救いになる。

特に印象的なのは、第4章の「言語化ノート術」。1日10分、テーマを決めて書き出し、最後に自分なりのまとめをつくるというシンプルな方法だが、これを5日間続けると、自分の思考のクセや感情のパターンが見えてくる。ノートという“安全な空間”に思考を吐き出すことで、無意識のもやもやが整理され、「自分はこう考えていたのか」という気づきが得られる。このワークは、ライティングやプレゼン準備にも応用でき、実用度が高い。

また、本書は「論理」と「感情」のバランスが絶妙だ。言語化を論理的な構造化のスキルとして扱う一方で、感情や直感の扱い方にも丁寧に言及している。「なぜそう思ったのか?」を掘り下げることが、自分の本音や価値観を浮かび上がらせる鍵になると説く点は、まさに“心理的言語化”の核心だ。

文章も非常に読みやすく、専門用語を使わずに、誰にでも実践できる方法を提示している。図解や具体例も豊富で、抽象論に終わらない。ビジネス書でありながら、読後に心が軽くなる点が本書の魅力である。

特におすすめしたい読者は以下のような人だ:

  • 会議や面接で、自分の考えをうまく言葉にできない人
  • 頭の中が散らかっていて、何から整理すべきか迷っている人
  • 書く習慣を身につけたいが、継続が苦手な人
  • 自己理解を深めたいビジネスパーソンやクリエイター

総じて、本書は「考えを言葉にする」すべての人のための実践的ガイドである。荒木氏が示すステップは、日々の会話や文章作成、さらには自己対話の場面でも応用可能だ。読後には、「言葉が整えば、人生も整う」というメッセージが静かに胸に残る。

総合評価(5段階)

  • 実用性:★★★★★
  • 読みやすさ:★★★★★
  • 深さ・気づき:★★★★☆
  • 継続しやすさ:★★★★★
  • 総合おすすめ度:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(5/5)

まとめ

『こうやって、頭のなかを言語化する。』は、単なる思考整理のハウツー本にとどまらず、「自分を知るための哲学的ツール」としての側面も持つ。ノートとペンさえあれば、誰でも今日から言語化体質をつくることができる。
“伝える”ことに悩むすべての人に、強くおすすめできる一冊である。

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この記事を書いた人

私は、経営コンサルタントとして、ビジネスの実践現場で活動しています。現場で「使える知識」として再構成し、“読む → 学ぶ → 行動する” までのビジネスプロセスをサポートしています。

このブログでは、そのようなコンサルティングの経験を通じて、役に立ったビジネス書を紹介します。おすすめ書籍の要約や感想だけでなく、実際に成果につながるエッセンス・行動アイデア・思考法を解説します。「この一冊を読んでどう変わるか?」にこだわったレビューを発信しています。

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