『死ぬまで歩きたい!~人生100年時代と足病医学~』 (久道勝也 著)

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レビュー

『死ぬまで歩きたい!~人生100年時代と足病医学~』は、足の専門医である久道勝也氏が、日本人の健康寿命を延ばすために提案する“足の重要性”に特化した啓発書です。著者は、日本で唯一の足病専門病院「下北沢病院」の設立者であり、アメリカでは医師資格として確立されている「足病医(Podiatrist)」という分野を日本に普及させようと尽力しています。

本書の最大の特徴は、健康寿命を「歩ける年数」として捉え、歩行を維持することが幸福な人生の鍵であると明快に説いている点です。「寿命=健康」とは限らず、歩けなくなったその日から老化のスピードが加速するという現実に対し、警鐘を鳴らしています。

さらに、日々の足のケアや靴の選び方、正しい歩き方といった具体的な対策も多数掲載されており、読者が「明日から何をすればいいのか」が明確にわかる構成になっています。単なる理論ではなく、生活に密着した実践的なアドバイスが光る内容です。

高齢者自身はもちろん、家族の健康を気遣う中年世代、介護や医療の現場に関わる人々にとっても、本書は価値ある一冊です。特に、高齢者の“歩く意欲”を引き出すための「共感力」や「セカンドライフストーリー」といった心理的アプローチの章は、実際の現場でも応用できる示唆に富んでいます。

要点リスト

  • 健康寿命のカギは「歩行の維持」にある
  • “足の寿命”が尽きることで老化が始まる
  • 歩くことは身体と脳の健康に効果的
  • 靴選び・足のケア・ストレッチの習慣が重要
  • 足病医の専門性が健康寿命を支える
  • モチベーションは「共感」や「ストーリー」が支える
  • 老人力とは「できることに注目する力」
  • 下北沢病院の実践が足の医療のモデルケースに

読後の感想

本書を通じて、私たちがどれほど足の健康を軽視してきたかを痛感しました。歩くことはあまりにも当たり前の行為であり、その重要性を実感するのは、たいてい「歩けなくなってから」です。しかし著者は「足の寿命が尽きると、人生そのものの質が一気に下がる」と語り、それは決して大げさではないと納得させられます。

特に印象的だったのは、足のトラブルを放置することが、全身の健康に波及するという指摘です。例えば糖尿病から足の壊疽へと進行し、最終的には切断や寝たきりという深刻な状態に至るケースが少なくない。これまで内臓や脳の健康ばかりが注目されがちでしたが、足元の問題がそこまで重大であるとは、読むまで想像もしていませんでした。

また、「共感によって行動が変わる」というモチベーションの話も非常に興味深い視点でした。ただ「歩いた方がいいですよ」と伝えるだけでは人は動かない。大切なのは、本人が「なぜ自分は歩きたいのか?」という動機を持ち、それを人生のストーリーとして描けること。この考え方は、介護やリハビリの現場だけでなく、あらゆる場面で応用できる普遍的な視点だと感じます。

老後をポジティブに捉える「老人力」という概念も印象に残ります。年齢を「減る」ものではなく「積み重ねる」ものとして肯定的に受け止める姿勢は、読者に勇気と前向きさを与えてくれます。

総じて、本書は人生100年時代を歩き切るための、現実的かつ希望に満ちた“人生設計書”です。

 この本をおすすめしたい人

  • 60歳以上のシニア層とその家族
  • 健康寿命を意識し始めた40〜50代
  • 介護・医療・福祉に関わる専門職の方
  • フレイル予防や転倒予防に関心がある方
  • 「いつまでも自分の足で歩きたい」と願うすべての人

総合評価

読みやすさ★★★★☆
実用性★★★★★
専門性★★★★☆
モチベーション★★★★★
総合おすすめ度★★★★★

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この記事を書いた人

私は、経営コンサルタントとして、ビジネスの実践現場で活動しています。現場で「使える知識」として再構成し、“読む → 学ぶ → 行動する” までのビジネスプロセスをサポートしています。

このブログでは、そのようなコンサルティングの経験を通じて、役に立ったビジネス書を紹介します。おすすめ書籍の要約や感想だけでなく、実際に成果につながるエッセンス・行動アイデア・思考法を解説します。「この一冊を読んでどう変わるか?」にこだわったレビューを発信しています。

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