レビュー
本書は、テーマパーク業界における伝説のマーケター・森岡毅氏が、自らの手で立ち上げた700億円規模の巨大プロジェクト「JUNGLIA(ジャングリア)」実現までの道のりを、圧倒的なリアリティで描くドキュメンタリー作品です。
USJを復活させた後、森岡氏は「マーケティングを日本の武器に」という志を掲げ、起業家として新たな戦場に身を投じます。立ち上げた会社「刀(KATANA)」は、丸亀製麺やネスタリゾート神戸などを手がける中で急成長する一方、「テーマパークを沖縄に創る」という壮大なビジョンを抱えることになります。
しかしその過程には、資金調達難、仲間の離脱、コロナによる事業崩壊の危機、ウクライナ戦争による外的打撃など、数々の逆境が立ちはだかります。本書では、それら困難にどう向き合い、どう突破してきたのかが、当事者の目線で綴られています。
単なる成功物語ではなく、失敗、葛藤、不安といった“裏側”に焦点を当てた構成が、本書の最大の魅力です。夢に向かって生きることの本質、「挑戦とは何か」が読み手に問われる、圧巻のビジネスノンフィクションです。
要点
- USJでの成功が「勝ちすぎのリスク」として返ってくる。
- マーケティングを国家の武器にすべく、刀を設立。
- 起業後、資金難・信頼の崩壊・孤独との戦いが続く。
- コロナ禍とウクライナ侵攻という外的要因にも打ちのめされる。
- 信頼できる仲間と出資者の存在が希望となる。
- JUNGLIAは夢や理想ではなく、「日本に必要な場所」として位置づけられる。
- 「心に折れない刀」は目的の正しさと戦い抜いた記憶から生まれる。
- ビジネス書でありながら、自己啓発書としても強く響く構成。
- 困難を抱えるすべての人に、諦めず挑み続ける勇気を与える一冊。
感想〜「心が折れる」ときに読むべき一冊〜
本書を通してまず感じるのは、「成功者」の美談ではなく、「一人の人間が崩れかけながらも前進し続けた記録」だということです。森岡氏は理論家であり、戦略家ですが、それ以上に「実践者」なのだということが本書から伝わってきます。
特に胸を打たれたのは、コロナ禍で沖縄に誰も来なくなり、投資家が蜘蛛の子を散らすように逃げていく場面。それでも彼は「火を絶やすな」「どんな土砂降りでも希望に火を灯せ」と語ります。これは精神論ではなく、ビジネスにおけるリアルな胆力です。
また、チーム作り・資金戦略・事業コンセプトの構築など、ビジネスにおける実践的知見が豊富に盛り込まれており、起業家・経営者・リーダー層には特に刺さる内容となっています。一方で、就活生や転職を考えている若手にも、「キャリアとは何か」「働く目的とは何か」を再定義させられる一冊でもあります。
そして忘れてはならないのが、「人生において、心が折れそうなときに必要なのは、正しい目的と戦い抜いた記憶」というメッセージ。この言葉は、本書全体の魂ともいえる部分です。
おすすめ対象
本書は、以下のような方に特におすすめです:
- 逆境を乗り越えたいと願うすべての人
- 論理だけでなく情熱を持つビジネスパーソン
- 起業・経営に携わる実務家
- キャリアに迷う学生・若手社会人
- 本気で挑戦したい何かがある人
評価
コメント内容の深さ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(実体験に基づいた説得力と情報量が圧巻)
読みやすさ⭐️⭐️⭐️⭐️☆(語り口調で進み、重すぎず読める)
実用性⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(起業や組織マネジメントに直結するヒント多数)
感動・共感度⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(「生きる力」をもらえる一冊)
総合評価⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(4.8)(今年最注目のビジネス書、ドキュメンタリーとしても秀逸)
最後に
この本は、あなたの中の「挑戦心」に火をつける。
何かに迷ったとき、心が折れそうなとき、この本を開いてください。
そこには、何度でも立ち上がろうとする“狼たち”の姿が描かれています。
そしてあなたにもきっと、“折れない刀”が宿るはずです。
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