レビュー
『言葉を短くする技術』は、話すことに悩むすべての人にとって“目からウロコ”の一冊だ。ビジネス、教育、家庭、SNSなど、あらゆる場面で「伝える力」が問われる現代において、多くの人が「話し方」を練習するが、「話の長さ」を意識的に鍛える人は少ない。著者の岡田真一氏は、その盲点に鋭く切り込む。
本書の魅力は、「短く話す=不親切」という思い込みを根底から覆す点にある。岡田氏は、短い言葉こそが相手に想像の余地を与え、理解を促進すると説く。つまり、短くすることは情報を削る行為ではなく、「伝わりやすくする編集」なのだ。この視点は、ビジネス会議での説明、上司への報告、プレゼンやSNS発信など、あらゆる場面に応用できる。
特に印象的なのは、「まとめるな、区切れ」という第2章の主張だ。多くの会話術やプレゼン本が「まとめる力」を強調する中で、岡田氏はあえてそれを否定し、「情報を区切って見せる」方が圧倒的に伝わると論じる。この考え方は、コピーライティングやストーリーテリングにも通じる実践的な洞察である。
第3章の「あなたは?」というシンプルな言葉の力も興味深い。相手に問いを返すことで、会話のテンポが生まれ、対話が共同作業になる。単なるテクニックに留まらず、「相手を尊重する姿勢」として機能している点が本書の温かみである。
終章では、「言葉を短くすること」が人生の豊かさにつながると締めくくられる。短い言葉は自分の思考を整理し、他者への信頼を生む。これは単なる話術ではなく、自己理解と他者理解の両輪である。長く話して伝わらない人よりも、短く話して届く人になること。それがこれからの時代に求められる「伝える力」だと感じさせる。
文章は平易でリズミカル。専門書にありがちな堅苦しさはなく、会話調で読みやすい。内容は実践的でありながら、精神論に偏らないバランス感覚がある。章末の「ひと言メモ」や事例もわかりやすく、すぐに仕事や日常で使える。
要点リスト
- 「話し方」より「話の長さ」を見直す。
- 「まとめる」より「区切る」が正解。
- 「承諾」と「あなたは?」で会話のテンポを整える。
- 結論を先に、感情を短く伝える。
- 短く話すほど、思考も人間関係も豊かになる。
おすすめポイント
- 話が長いと感じる人、会議や面接で伝わらない人に最適。
- 伝達スキルより「思考の整理」に重点を置いた実践書。
- プレゼン・SNS発信・部下指導など、幅広く応用可能。
評価
内容の実用性★★★★★ 即効性のある話し方改革。
読みやすさ★★★★★ 例が豊富でテンポが良い。
独自性★★★★☆ 「区切る」発想が新鮮。
汎用性★★★★★ 仕事・教育・人間関係に活用可。
総合評価★★★★★ 「伝える力」を根本から変える一冊。


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