レビュー
「やる気が出ない」「三日坊主が治らない」「自分に甘い」——。多くの人が抱えるこうした悩みに対し、本書は「気合い」ではなく「技術」で応える一冊だ。著者の戸田大介氏は、200万ダウンロードを記録した習慣化アプリ「継続する技術」の開発者。その膨大なユーザーデータを分析し、継続成功者と失敗者の差を統計的に明らかにしている。
本書の最大の特徴は、**「習慣三原則」**というシンプルかつ実践的なフレームワークだ。
- すごく目標を下げる
- 動けるときに思い出す
- 例外を設けない
この3つを守るだけで、継続成功率は8倍以上に跳ね上がるという。例えば「1日5分でOK」といった小さな目標設定、「シャワーの後」など具体的な行動トリガーの設定、「忙しい日も1回だけやる」といった極小代替行動の導入など、どれも今すぐ取り入れられる内容ばかりだ。
さらに、単なる理論書ではなく、物語形式で進行する点もユニーク。挫折を繰り返す青年・高橋くんが“習慣の賢者”と出会い、少しずつ変化していく様子を追うことで、読者も自然と学びを得られる構成になっている。
行動科学や心理学、アプリ開発の実データなど、多角的な知見をバランスよく盛り込みつつも、語り口は軽快で読みやすい。ビジネス書でありながら、肩ひじ張らずに読める「生活改善書」としても評価が高い。
要点
- 習慣化の挫折率は非常に高く、ストレッチ:85%、筋トレ:84%、勉強:88%、ジム:95%が30日以内に断念。
- 成功するには「習慣三原則」が重要:
- すごく目標を下げる(1日5分など)
- 動けるときに思い出す(行動のトリガーを設定)
- 例外を設けない(極小でも代替行動を継続)
- 習慣化は「気合い」ではなく「仕組み」で成り立つ。
- 主人公の物語を通じて、読者自身が共感しながら学べる構成。
- 実際のアプリユーザー200万人分のデータが根拠になっており、説得力がある。
- 「継続できない自分」を責めるのではなく、行動設計を見直すことが肝要。
感想
まず第一に、本書は「習慣化に失敗するのは自分の弱さ」と思い込んでいる読者にとって、非常に救いとなる構成だ。科学的な根拠と、圧倒的なデータに基づいたアプローチにより、「正しい方法さえ知っていれば誰でも続けられる」というメッセージが力強く伝わってくる。
特に感銘を受けたのは、「例外を設けない」という原則の実用性だ。挫折の多くは「今日は忙しいからやめよう」といった“ゼロ行動”から始まる。これを防ぐために、1回の深呼吸、腕立て1回でもOKとする“超ミニマム”な代替行動を提示するのは、心理的にも極めて効果的であり、実践のハードルを一気に下げる。
また、「動けるタイミング」の話も非常に腑に落ちた。多くの人が「朝やろう」と漠然と考えるが、それでは継続しにくい。本書は、「◯◯の後」という“行動にひもづいた時間”を利用することで、自然にルーティン化する方法を提示している。これはまさに“行動設計”の具体例と言える。
一方で、意識高い系の自己啓発本によくある“抽象的なポジティブワードの連呼”や、“理論倒れの主張”は一切ない。その点でも、本書はビジネスパーソンや現場志向の読者にフィットしやすい一冊だと感じた。
惜しい点をあえて挙げるとすれば、やや“万人受け”に振っている印象もあり、もっと専門的な習慣形成理論に触れたい読者には物足りないかもしれない。しかし、それを補って余りある実践性と親しみやすさがある。
こんな人におすすめ
- 三日坊主を卒業したい人
- 習慣本を読んでも実行できなかった人
- 行動科学に基づいた実用的ノウハウを探している人
- 「やる気」より「仕組み」で動きたい人
- ダイエット・勉強・運動など継続タスクに挑戦中の人
特に優れている点
- データに基づいた納得感ある理論
- 小さな行動から始めるという安心感
- 物語形式による読みやすさと没入感
- 習慣化アプリと連携した実践モデルの存在
総合評価
⭐️⭐️⭐️⭐️☆
読みやすさ★★★★★
実用性★★★★★
新規性★★★★☆
科学的根拠★★★★☆
総合満足度★★★★☆(4.6)
結論
『継続する技術』は、「自分には無理」と諦めていた人にこそ読んでほしい、“習慣化の再入門書”。やる気不要、完璧主義不要。あなたに必要なのは、ほんの小さなスタートだけだ。
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