レビュー
『決算書は必ず裏を読め！』は、経済評論家としても活躍する勝間和代氏が「会計の読み方」ではなく「会計の考え方」を、マンガ形式でわかりやすく解説した入門書です。対象は会計初心者ですが、内容は表面的な解説にとどまらず、実務に活かせる“裏読み”の視点を身につけることに重点が置かれています。
本書は、損益計算書（PL）、貸借対照表（BS）、キャッシュフロー計算書（C/F）の3つの決算書を順を追って解説していきます。それぞれの書類にどんな情報が含まれ、どこを見ればその会社の「本質」がわかるのか、ストーリー形式で自然に理解が深まるよう工夫されています。PLでは利益の種類やその意味合い、BSでは財務の健全性や投資判断の裏側、C/Fでは資金繰りの実態など、ビジネスパーソンとして必要不可欠な視点が身につきます。
タイトルにある「裏を読め！」という表現が示す通り、ただ数字を追うだけでなく、その数字が生まれた背景や経営者の意図までを推察するよう促してくれる構成です。実際の会計書類は複雑で抽象的に思えるものですが、本書ではマンガと会話形式を活用し、読者が無理なく“気づき”を得られるよう工夫されています。
また、従来の「お堅い会計本」とは違い、日常の業務や企業分析に役立つヒントが多く盛り込まれており、「決算書に苦手意識があるが、避けて通れない」と感じている人に最適な一冊です。
要点リスト（重要ポイントの箇条書き）
- 決算書は「何が書かれていないか」を読む視点が重要
- PLで見るべきは「営業利益」「経常利益」「純利益」の内訳とその質
- BSでは資産の中身（質）と負債のバランスを重視すべし
- C/Fは利益とのズレを見ることで資金繰りの実態が見える
- 3つの決算書は「組み合わせて読む」ことで初めて真価を発揮する
- 複数年の比較で「変化」を見る習慣を持つ
- 数字の裏にある経営者の意図や戦略を読み解く姿勢が求められる
- 会計は「数字の翻訳」であり、経営の言語である
読後の感想
会計の本は数あれど、本書の特徴は「読むのが苦痛でない」という点に尽きます。会計知識の本質は、難しい専門用語の理解ではなく、「数字の背後にある意味を読み解くこと」です。本書はこの点において、非常に優れた入門書であると感じました。
特に印象的だったのは、単なるPLやBSの見方ではなく、それらの「つながり」や「矛盾」に注目する点です。たとえば、PLでは黒字でも、C/Fを見るとキャッシュが減っている。こうした事例を通じて、「本当に健全な会社とは何か」を読者自身に考えさせる構成になっています。これは、知識だけでなく、思考力も鍛えられる内容だと言えるでしょう。
また、「決算書の読み方」は仕事で必要だとわかっていながらも、何をどこから学べばいいか分からない、という方には特におすすめです。筆者の勝間氏が監査法人や投資銀行を経て得た経験をベースに書かれており、実務的な視点からのアドバイスも豊富です。「決算書には、会社の性格や将来性までもが隠されている」という指摘には深く納得させられました。
難を挙げるとすれば、マンガ形式ゆえに少し軽く見える部分もありますが、その分、心理的なハードルが下がって読みやすいという利点にもつながっています。初学者だけでなく、中堅ビジネスパーソンにとっても、「復習と視点の確認」という意味で手元に置いておきたい一冊です。
こんな人におすすめ
- 会計・財務の知識に不安がある若手ビジネスパーソン
- 決算書の読み方を「実践的に」学びたい中小企業の経営者
- 投資判断や企業分析をする個人投資家
- 数字の裏側にある「経営者の意図」まで読み解きたい人
- これまで会計書籍に挫折してきた人（マンガ形式で読みやすい！）
【評価まとめ】
| 項目 | 評価（5点満点） |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★★★★（5） |
| 実用性 | ★★★★☆（4） |
| 初心者向け度 | ★★★★★（5） |
| 深さ・洞察力 | ★★★★☆（4） |
| 総合評価 | ★★★★☆（4.5） |
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