レビュー
本書は、「ダメダメ社長」と自称する著者・有田和明氏が、5年間で利益を10倍にまで伸ばす過程を赤裸々に綴った、非常に実践的な経営・自己啓発書です。単なる成功物語ではなく、数々の失敗を経たうえで導き出された「成功の思考法」と「行動原則」に重きが置かれています。
スタート地点は、経営経験の乏しさから生まれるトラブルの連続。商談資料の持参忘れ、共同経営者の離脱、コロナ禍による店舗運営の困難など、著者は数々の痛い経験を積みます。しかし、それらをただの「失敗」とせず、「成長するための試練」と捉えなおす力が彼を変えていきます。
本書の大きな転機は、「メンターとの出会い」です。著者は、自身の思考・行動の在り方を徹底的に見直し、「正しい努力」「成果に直結する行動」「価値提供の発想」へと舵を切ります。このプロセスを実体験ベースで語っているため、読者は理屈だけでなく、感情的な共感を通じて「自分も変われるかもしれない」と思わせられます。
後半では、対人関係の構築や、困難の意味づけに焦点が当てられます。ビジネスにおいて成果を出すには「誰と、どんな信頼関係を築けるか」が重要であり、そのための基本が「聞く力」「承認」「感謝」であると語られます。また、問題や障害を「人生のメッセージ」として受け止める思考法も紹介されており、単なるテクニックではなく、長期的な人間的成長を目指す視点が特徴です。
要点
- 失敗は「成長の材料」であり、回避すべきものではない
- 成功には「正しい努力の方向性」が欠かせない
- 与えることを重視する人が、豊かさを引き寄せる
- 信頼される人間関係を築くには「聞く・承認・感謝」が鍵
- 困難には意味があると解釈する「思考力」が未来を変える
- 自己流から脱却し、他者から学ぶ姿勢が飛躍を生む
- 成果に直結しない「なんとなくの努力」は捨てるべき
- 人は“変われる”ということを、体験と結果をもって証明した書
読後の感想
一読してまず感じたのは、非常に読みやすく、かつ心を打つエピソードが満載だということです。とくに第1章で描かれる「ダメ社長時代」のエピソードは、失敗に対する羞恥や無力感など、読者の多くが抱いたことのある感情に寄り添っており、素直に引き込まれました。
本書の魅力は、成功の裏にある“努力の質”と“思考の変化”を具体的に示している点にあります。たとえば、「正しい努力をしていなかった」「忙しくしているだけでは意味がない」といった気づきは、多くのビジネスパーソンにとって耳の痛い話かもしれません。しかしそれを責めるのではなく、「自分もそうだった」と著者自身が自虐的に語ってくれることで、読者は前向きに受け止めることができます。
また、「貢献」と「価値提供」を中心に据える考え方には、非常に共感しました。売上至上主義ではなく、「自分が誰に、何を提供できるのか」を問い続ける姿勢が、著者の成長の根幹にあるのです。この点は、ビジネスに限らず、教育・福祉・クリエイティブ分野など、あらゆる職業人に参考になると感じました。
さらに、困難や逆境に対する捉え方は、非常にポジティブで実用的です。「なぜこの困難が自分に与えられたのか?」と自問することで、自分の現在地と未来のステップが見えてくる——この思考法は、自己啓発書でありがちなスピリチュアルな話に陥ることなく、極めて地に足のついた内容としてまとまっています。
全体として、読後には“自分もやってみよう”という気持ちが自然と湧いてくる一冊でした。
こんな人におすすめ
- 起業・独立を考えている人
- 成果が出ずに「努力が空回りしている」と感じている人
- 経営初心者や、失敗を乗り越えたい若手ビジネスパーソン
- 人間関係や思考力に課題を感じている全世代の社会人
- モチベーションが欲しいときに読みたい自己啓発書を探している人
評価
項目評価読みやすさ★★★★★(非常にスムーズ)
実用性★★★★☆(すぐ実践に応用可能)
共感性★★★★★(感情面に訴える)
独自性★★★★☆(体験ベースの説得力)
総合評価★★★★★(読後感・満足度ともに高い)


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