管理会計はビジネスリーダーに必須なスキル
1 ビジネスリーダーに求められるスキルが管理会計
ビジネスリーダーを目指すなら、どんなスキルを習得すればいいでしょうか。
・日商簿記1級?
・公認会計士?
こうした難関資格の勉強は、時間もかかりますし、働きながらの学習は結構大変で、多くの人たちが挫折しています。
難関資格の取得に多くの時間を費やすより、もっと短くそして効率的に習得できるスキルがあります。
それが管理会計です。
公認会計士や日商簿記の合格者であっても、管理会計の知識を使って自信を持って経営改善を提言できる会計人は多くいません。
なぜならほとんどの会計人は財務会計しか学んでいないからです。
私の職場にも公認会計士や簿記を学んだ人はいます。
彼らは財務諸表を作成したり、財務諸表を監査したりすることはできますが、経営に求められる分析や提言ができません。
だから、ビジネスリーダーにはなれません。
経営者は、財務諸表自体に興味はありません。なぜなら財務諸表は過去の数字だからです。過去の数字公表がメインである財務会計だけでは、会社の競争力アップにはつながりません。
一方、管理会計は将来の経営の方向性を決定します。そしてその意思決定は、会社の競争力を左右します。
管理会計のスキルがあれば、「予算」と「決算」の2つの方向から分析できます。これは未来と過去の双方向から現在考えられるベストの経営の意思決定ができるということです。
また「費用」と「利益」による損益分岐点の分析による経営戦略の実行も可能です。
管理会計ができれば、未来の計画と過去の結果から計画を立て、正しい意志決定ができるビジネスリーダーになれます。
現状を分析し、課題を見つけ、解決策を提案・実行し、その結果を更に改善するPDCAするスキルが、管理会計です。
2 管理会計を実践で使うために必要な3つの力
管理会計は、ステークホルダーに公開する財務情報を扱う財務会計とは違って、会社内部の管理を行うための会計です。
管理会計を実践で使うには、分析力、計画力、現場力、経営陣とのコミュニケーション力が必要です。管理会計のスペシャリストには、数字の分析に加え、折衝や交渉・調整までに及ぶ幅広いスキルが求められます。
これらはビジネスリーダーになるためのスキルそのものです。
管理会計のスペシャリストとしてビジネス界で活躍するためには、3つの力が必要です。
(1)自分で考えようとする力
(2)全体像をとらえたロジカルな分析力
(3)わかりやすく伝える力
(1) 自分で考えようとする力
管理会計は、「会計であって会計でない」ことをまず知っておきましょう。
財務会計は計算方法や答えの求め方は決められていますが、管理会計の用い方は、会社の数だけあります。
ということは、自社にとって最も必要な管理会計を自分で考えることが必要です。そしてそれが経営改善に活かされ、実際に経営改善が見えてこなければ意味がありません。
(2)会社の課題・問題の全体像をとらえたロジカルな分析力
自分で考えようとする時、会社の課題や問題の詳細にとらわれずに、まずは全体像をとらえることが大事です。
財務会計では、仕訳など詳細なところまで正確に見ていくことが求められます。
しかし、基準がない管理会計では、将来の環境や状況の変化も条件に入れながら経営全体を見通さなければなりません。
(3)わかりやすく伝える力
自分で考え、全体像をとらえたロジカルに分析した後は、経営者にわかりやすく伝えなければなりません。
会計のプロフェッショナルによくある話です。
「言っていることが専門的過ぎてわからない」
管理会計の専門的な分析結果をわかりやすく伝えることができなければ、会社経営は何の改善もできません。
3 管理会計の内容を伝えるコツ
せっかく意思決定のための説得力ある分析ができても、それを伝える段階で専門的過ぎになって、経営者に理解してもらえなければ意味がありません。
伝わらない理由は、きっとこんな感じです。
- 何を伝えていいかわからない
- 何のために伝えるかわからない
- 誰に向けて伝えていいかわからない
だったら、これらの理由をつぶして、伝えればいいのです。
- 何がどうなっているから
- いつまでに何をどのようにすればいいか
具体的には以下を気をつけます。
- プレゼンのセールスポイントは最大3つまで
- 誰に伝えたいのか、ターゲットを絞る
- 相手の言葉で話す、専門用語やビッグワードは使わない
- 内容は短くシンプルに
- 話が長くならないようにする
- 原稿読みは絶対にしない
また資料作成にも余計な労力はかけません。極めて簡素で最低限のキーワードや情報だけのスライドにします。どうせプレゼンが終わったら、資料はゴミ箱に直行です。
わざわざスライドをみせる目的は何でしょうか。
情報がごちゃごちゃあるスライドは、疲れるし、理解力も低下し、集中力が切れてしまいます。
伝えたいことをシンプルに伝えて心を動かすスライドを心がけます。
言葉で伝えきれない情報は、それを一瞬で伝えることができる画像を見せます。大量の資料と情報量は避け、プレゼン後もストーリーがしっかりと頭に残ることを心がけます。
- あなたの提案に賛同して意思決定してくれるか
- 聞き手のメリットをしっかりと伝えているか
- ターゲットは明確か
- 主張、理由、具体例、まとめの構成になっているか
- 聞き手に有力な情報か
管理会計を知らない相手に伝える力があるのが、「すごいビジネスリーダー」です。
人がYESと言って動いてくれるのが「すごいビジネスリーダー」です。
資料には長々とした文章、解釈のない数字やグラフが書いてある、そして、それをただ棒読みするだけでは、経営者の頭にも何も残りませんし、心に響きません。
ストーリーが頭に残らないのは、難しい数字や専門用語を使って説明が長いからです。
話が長いと伝える内容の骨子がぼやけます。
ストーリーを作るための3要素
何のためのプレゼンか
② 何を伝えたいのか
➂ 聞き手にどうなってほしいのか
<イントロ>
① プレゼン内容の要約
(今日は〇〇なメリットがある情報をお伝えします。)
② プレゼン後に求めるアウトプット
(あなたのXXXというアクションをお願いします。)
➂ アウトプットによるアウトカム
(そうすれば、XXXが変わります。)
<ボディ>
④ なぜアウトカム が可能か、それはXXだからです。
⑤ XXXの根拠1
⑥ XXXの根拠2
⑦ XXXの根拠3
⑧ これだけのメリットが出ます。
<クロージング>
⑨ 今日はXXXという将来が変わる話をしました。
⑩ そのためには、あなたの〇〇〇する意思決定を期待しています。
⑪ あなたの行動に10人賛同すれば10倍、100人なら100倍になります。
⑫ そんなことが可能となる情報提供をさせていただきました。
相手に伝える目的は、経営者に意志決定してもらうためのものです。
「○○したいです。だから賛成してください」これが伝える本質です。
どんなに専門的な言葉と多くのデータを使っても、経営者が意思決定してくれなければ管理会計は机上の空論で終わってしまいます。「みんな知らないことをしゃべってる自分ってすごい」といった独りよがりの承認欲求が強い人は、人を動かす伝え方はできません。
4 まとめ
管理会計のスペシャリストが求められる3つの力
(1)自分で考えようとする力
(2)全体像をとらえたロジカルな分析力
(3)わかりやすく伝える力
これらのスキルは、財務会計にはありません。
財務会計ではできない経営のための会計ができれば、本当の意味での財務のスペシャリストになれます。また、社内での評価も上がりキャリアップにつながるでしょう。
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