【管理会計 初級編 その3】管理会計の視点から、利益の本当の意味を考えてみよう
1 管理会計では利益を重要視しない
ビジネスリーダーは、利益を追求することに全力を尽くします。
それ故に利益が少ないと、どうしたらもっと利益が出るか大いに悩みます。
そんなビジネスリーダーには是非読んでほしいのがこの記事です。
このブログ記事を読めば、利益の大小に一喜一憂しなくなります。
そして、利益に対する考えが変わって、将来の価値を創造することを重要視するビジネスリーダーになれるでしょう。
管理会計を知っているビジネスリーダーは、年間利益の大小で一喜一憂しません。
管理会計では、一定期間での利益を信頼しません。
なぜなら、本当の意味での利益という概念は存在しないからです。
財務会計の世界(決算書)では、利益を出そうと思えば無理やり利益を出せます。
たとえば、利益を無理やり出すには、こんな方法があります。
- 仮払い生産を次期に回す
- 減価償却費を少なめに計上する
- 在庫金額を水増しする
- 財産を処分する
このような小手先の経理操作をしても、会社経営を改善することはできません。このような方法で決算書を良く見せようとするビジネスリーダーは、管理会計における利益が何かを理解していません。
優秀なビジネスリーダーは、一年間だけの利益が良かったとしても決して喜びません。
今年を何とか黒字にして乗り切っても、来年以降、大きな赤字を出し続けたら何の意味もありません。
会社はコストの塊です。
そのコストは、顧客が製品を買ってくれない限りカバーできません。
油断すると、コストは際限なく増え続けます。一度増えたコストは、簡単に減らせません。
管理会計が生まれたのもコストを簡単に管理できないからです。
コストを減らしても儲けが減らないようにするには、まず利益とは何かということをしっかりと理解する必要があります。
2 利益とは何か
管理会計では、利益を一体どのように理解するのでしょうか。
- 事業を存続するか撤退すべきかの判断材料
- リスクや失敗をカバーする保険のような存在
- 事業拡大のための原資
このように考えると、利益はビジネスの継続のために再利用されるため、利益は存在しないことがわかります。
ですから、ビジネスリーダーは、決算書の年間利益、過去の数字だけに一喜一憂するのではなく、むしろ現在から将来に渡って生み続ける付加価値の創造を重視します。
過去の利益にしがみつかず、将来の価値創造を訴える人こそ、できるビジネスリーダーと言えるでしょう。
正確な財務諸表の作成と公表が目的の財務会計は、ステークホルダーに過去の会社の実績を正しく作って表すことが使命です。その使命をはやすためには、会計基準に則って決算書を作れば、正しい実績は作れます。
しかし、ビジネスリーダーにとって、財務諸表を正しく読むことが経営ではありません。決算書を読めない人は経営者になれないと言う人がいますが、決算書が読めると経営できるというのは幻想です。
財務会計の知識だけでは正しい経営判断はできません。
売り上げ-費用=利益、これが儲けだと思っていると、大切なことを見落としてしまいます。利益が増えても現金が減る一方という場合もあり得るからです。そうならないためにも、利益は存在しないことを知って、利益と儲けをしっかりと区別しなければなりません。
利益と儲けを区別できている経営者はあまり多くいません。
利益と儲けの区別が分からないということは、本当の意味で会計はわかっていないということになります。
3 儲けとは何か
では、儲けとは何でしょうか。
それはキャッシュフローのことです。
決算書に表される年間の利益が信用できないなら、何を信用すればいいのでしょうか。
信用すべきものは、キャッシュフローです。
信用すべきは利益ではなくキャッシュフロー
こうした考えを持ったビジネスリーダーは本物の経営者です。
過去の利益に一喜一憂するよりも、過去から現在、現在から未来の価値を創造し続け、新たなキャッシュフローを生み出し続けることが、ビジネスリーダーに最も求められる資質です。
ビジネスリーダーの関心は、過去の短期的な業績ではなく、過去から現在、現在から未来をどう切り開くかでなければなりません。
利益は幻想であり、存在しないものです。つまり、利益とは単なる計算結果であって、その利益は将来のコストであったり借金於返済で無くなっていくのが真実です。だから利益は存在しないのです。
コストつまりお金は利益を生むために使わなければなりません。当たり前のことなのですが、できいない企業がたくさんあります。利益は、将来付加価値の創造のために使うのが正しい使い方です。
ビジネスリーダーは、お金を使う時、常に以下の3つを考えることが大切です。
- 将来の現金収入になるか
- キャッシュフローをもたらし続けるか
- 将来の現金支出を減らすためになるか
今年度の決算書に記載する利益をねん出するために、将来利益を出すためのコストをカットすることは、将来のキャッシュフローを放棄することと同じです。これはビジネスの後退に他なりません。
例えば一律5%カットなどは、まさにダメなコストカットの典型です。
コストの90%は価値を生んでいないビジネスでは、本来コストカットすべきは、この90%のコストを生じさせる活動であるべきです。
すべての商品がまんべんなく均等に売れているわけではありません。多くのビジネスの場合、売れる商品は全体の10%、多くて20%ぐらいです。その10%~20%の商品で大半の売り上げを占めているのが、ビジネスの本質です。
売り上げに貢献しているのは、常に「わずか」な要因です。
- わずかな商品
- わずかな顧客
- わずかな営業
これがビジネスの常です。
ですから、その「わずか」が機能しなくなったら、すぐに商品を常に入れ替えないと会社は存続できません。
ビジネスに新陳代謝が必要なのは、これが理由です。
商品には3つのタイプがあります。
- 昨日の主力製品
- 今日の主力製品
- 明日の主力製品
この3つのタイプをわかりやすく言えば、こんな感じでしょうか。
昨日の主力製品とは「定年まじかもしくは過去の栄光にすがっている部長」
今日の主力製品とは「稼ぎ頭で現場を回している課長や係長」
明日の主力製品とは「若手成長株の優秀な若手社員」
このように考えれば、どこの何をカットすべきかは一目瞭然です。また一律カットがどれだけ将来のキャッシュフローの弊害になるかも明らかです。
むしろ、明日の主力製品には更にコストを費やすことが重要であることわかるでしょう。
にもかかわらず、利益を確保するために、むやみに一律コストカットすることは、ダメな経営です。
ビジネスリーダーがお金の使い方に気をつけるべき唯一の心得は、これに尽きます。
お金は、設備維持費、減価償却費、リース料、人件費、材料費等のどうしても必要MUSTな支払を除いて、5年先10年後先に利益を生むために使うべきです。
4 まとめ
- 貸借対照表や損益計算書は会社の過去の活動を数値化したもので、経営とは関係はない
- 期間利益はただの過去の計算結果
- 期間利益だけでは本当の企業の業績はわからない
- 利益の大小関係なく、キャッシュフローを生み出せないと会社は破たんする
- 大切なのはキャッシュフローで、過去の会計情報に一喜一憂すべきではない
- 期間利益は、利益がどのように使われたか何も説明していない
- 将来に渡って新たに創り出す価値が最も大切
- 管理会計は、予算や設備投資等の意思決定は将来の活動を予測できる