【管理会計 初級編 その2】間接的業務の効率化 アウトソーシングとシェアードサービス

管理会計【初級】

1 間接的な業務の効率化

業務を効率化するためには、決算書をどんなに読みこんでもそこに答えはありません。
業務の効率化とは、すなわちコスト削減のことです。コスト削減のためには、本業とは直接関係が薄い、間接的な業務の効率化が求められます。

そこで、まず考えられる選択肢が、アウトソーシングによる外注とシェアードサービスによる業務の統合です。

なお、間接的業務の効率化によって、今までその業務に携わっていた人たちの雇用が侵されないように十分な注意が必要です。雇い止めなどによって労働問題にならないためには、たとえば役職定年を迎える人たちを出向する制度などを前もって整備し、労働組合や社員からの理解を得ておく必要があります。
業務の効率化という経営判断のもとで、不当解雇など労働者の権利を侵さないように十分に注意しましょう。

2 アウトソーシングのメリット

アウトソーシングとは、社内の業務を外部企業に委託することです。
主に総務、経理、労務管理等の間接的な社内業務を外部企業に委託します。

アウトソーシングすると、このようなメリットがあります。

  1. コスト削減
  2. 固定費の変動費化
  3. サービス拡大
  4. 経営資源の集中投入

(1)コスト削減
委託業務の専門である委託先企業のほうが、作業効率が良く、結果としてコストを自社よりも低く抑えることができます。

(2)固定費の変動費化
業務量に応じて人件費を抑えたい場合、アウトソーシングによって固定費である人件費を、変動費である委託手数料に変えることができます。これによって売上高に対して柔軟に人件費の削減が可能となります。

(3)サービス拡大
外部委託先が業務を専門的かつ集中的に行うことで、自社で行なうよりもサービスが拡大し、さらに質も向上します。

(4)経営資源の集中投入
アウトソーシングによって業務従事者や設備等が不要になり、組織をスリム化できます。スリム化した分、社内に存在する更に重要な業務への経営資源の集中的投入が可能になります。

3 アウトソーシングのデメリット

コスト削減や組織のスリム化できるなら、何でもアウトソーシングすればいいということではありません。

競争優位性のあるノウハウをアウトソーシングしてはいけません。

自社の強みをアウトソーシングしてしまうと、情報収集力、管理力、交渉力のノウハウが流失してしまいます。
競争優位性がある業務は社内で行い、誰でもできる平均点な業務を外部に委託しますのが良いでしょう。

もう一つ大事なことは、アウトソーシング先に自社のお客さんを任せられるほどの信頼性があるかどうかです。
社内業務を外部の企業に任せても、個人情報管理や機密保持そしてアウトプットの正確性の管理はしなくてはなりません。管理上の責任をアウトソーシング先に負わせることはできません。
仮に外部委託しても、顧客や製品の最終責任は発注元の企業にあることを忘れないことが大事です。

4 シェアードサービスのメリット

シェアードサービスとは、社内でダブりのある業務を1部署に集中させることです。

シェアードサービスは、このようなメリットがあります。

  1. 業務の標準化
  2. 業務のスピード化、効率化
  3. コスト削減
  4. 専門性の高い社員の育成
  5. アウトプットのレベル向上
  6. 管理体制や内部統制の強化

分散した業務を社内の一部署に集中させるやり方とは別に、専門の子会社を設立し、そこに業務を集中させる方法もあります。

組織を独立させて子会社化すると、業務標準化による大きな成果が出ます。また給与体系を新たに設定して人件費を抑えることもできます。

これをさらに発展させ、同じ業種の企業が数社集まって業務の集中化、標準化するシェアードサービスをすると、各企業のノウハウが集中化し、業界全体の標準化にも繋がり、大きな成果がでます。

5 シェアードサービスのデメリット

シェアードサービスは、社内業務を標準化し、コストを削減できることに加え、シェアードサービスを請け負う子会社を設立することで、外部の企業からの業務も引き受け、売上や利益を増やすことも可能にします。

しかし、外部の企業から業務を引き受けると、外部企業の要望に合わせてカスタマイズを迫られます。それが多くなると、業務の標準化が鈍化し、本来の目的が達成されなくなり、メリットを失います。

6 アウトソーシングVS シェアードサービス

アウトソーシングとシェアードサービスは、いずれも間接業務の効率化、コスト削減等を可能にします。

2つの違いは、業務を外部に委託するのか、社内で集中して行なうのか、という点です。

アウトソーシングとシェアードサービスは、どちらがいいのでしょうか。

単純作業や競争優位に関係しない業務は、コスト削減を重視してアウトソーシングを選択します。

ただ、内部統制を強化することで、企業価値を高める目的であれば、シェアードサービスが望ましいと言えます。

なかにはアウトソーシングによって間接業務の効率化やコスト削減の成果が出ていない企業もあるようです。
コスト削減ができない、ミスが堪えない故の業務の質の低下の原因は、委託する外注先の選び方や契約内容の問題、そして外注先の管理の不徹底などが考えられます。

よくある話が、アウトソーシングしてみると、委託する業務量が多すぎでコスト削減にはならなかったというケースです。また業務のラーニングカーブが遅く、慣れるまでにミスが多く起こってしまい、そのミスのフォローや指導で、コストが逆に増えたというケースもあります。

このような状態にならないようにするためにも、アウトソーシングする委託先には十分な実績のある会社を選択する必要があります。そして、業務を丸投げするのではなく、できるだけ委託する業務の標準化を前もって形にしておくことが大事です。更には契約内容に、思った以上に成果が上がらない場合のセーフティーネットとしてお互いが納得する条項を加えておいて、後でトラブルにならないような危機管理も必要です。
特に、営業や販売などをアウトソーシングしている企業は、成果が顕著に表れている事例はあまり聞きません。こうした競争優位性のある業務は、社内でシェアードサービスを立ち上げ、顧客第一主義を貫き通した方が企業にとっても顧客にとってもメリットがありそうです。

シェアードサービスは、自社のばらばらな業務を一つにまとめるにあたっては、まずは人事、経理、総務といった間接業務を専門子会社にすることで、専門性が蓄積され、更には業務の標準化によるコスト削減といった両方の成果が出ているケースもあるようです。

6 まとめ

  • 社内の業務を外部企業に委託することをアウトソーシングと言います。
  • アウトソーシングは、コスト削減、固定費の変動費化、サービスの向上と拡大、経営資源の集中投入などのメリットがあります。
  • 競争優位性のある分野はアウトソーシングしないようにします。
  • アウトソーシングしても、顧客への責任は自社にあるので、信頼関係が築けるアウトソーシング先と契約します。
  • 企業内の各部署に分散している類似業務を一部署に集中させることをシェアードサービスと言います。
  • シェアードサービスは業務を標準化、効率化でき、組織のスリム化、コストダウンを可能にします。
  • 外部の企業から業務が増え過ぎると、要望に合わせてカスタマイズを迫られ、結果として業務の標準化ができずに、本来の目的が達成されなくなり、メリットを失います。