反論スキルを身につけよう!
反論術を身につけよう!
私は、職業柄、議論、反論、口論する機会が多々あります。教授会や委員会などは、如何に他の教授を論破するか、言葉狩りの世界です。梯子を外されるのは日常茶飯事、常に派閥の入れ替え、人間関係がひしめく世界です。
若い頃は、口下手で自分が言いたいこと言えずに悔しい思いをたくさんしてきました。恥もたくさんかかされました。そういう経験から、自然と反論術が身に尽きました。
しっかりと反論できないのは、こんな理由が殆どです。
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・自分に自信がない
・どのように言い返せばいいかわからない
・反論するタイミングがわからない
・相手に申し訳ない
皆さんも、きっと会社やプライベートで口論になったり、質問された時、咄嗟に答えが出ず、つい沈黙してしまうこともあるでしょう。
そんな時は、質問を質問で返したり、「ところで」と言って話題を変えてしまう、質問内容を批判するなどして、時間を稼いでいるその間に、適切な返答を考えます。
このブログを通じて、反論術を是非自分のものにしていただければ、幸いです。
【反論術 1】 それって、どういう意味ですか
どんな時でも使える反論方法です。
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「その質問の意図がよくわかりません」
「それってどういう意味ですか?」
「そもそも趣旨がずれていませんか?」
相手の質問に質問で返します。
実際に私が質問された例で考えてみましょう。
「自分のテーゼだけに執着せずに、アンチテーゼにも耳を傾け、ジンテーゼにすべきた。弁証法的に考えたほうがいいのではないか」
「難しいドイツ語ばかりですが、日本語ではどういう意味ですか?弁証法って何ですか?ジンテーゼと言いますが、その過程のアウフヘーベンについてはどう考えますか?私がテーゼなら、あなたはアンチテーゼ、だったらジンテーゼはどうなりますか?そのためにはどのようなアウフヘーベンを考えていますか?そもそも質問の意図は何ですか?どんな趣旨があるのですか?」
私は質問した相手に、可能な限りたくさん質問返しをしました。相手は黙って何も言えずに沈黙が続きました。その後、この人は私に面と向かって色々と意地悪な質問をしなくなりました。
特に、横文字や英単語を混ぜながら質問する人、自分だけが知っている専門用語を使って話す人、知ったかぶってる人には、「日本語で言うとどうなりますか」「もっとわかりやすい言葉でお願いします」「それってどういう意味ですか?」と言い返すと有効です。
質問返しで相手の勢いが弱まる場合、その相手も自分がした質問の意味が良く変わっていないということです。それが周りにわかると、相手は恥をかきますし、「この人に迂闊に質問したらこっちがやられるな」と次からあなたに意地悪な質問はしなくなるでしょう。
【反論術 2】図表化してください
あなたが言ったことに対して、反論を長々とまくし立ててくる人には、「わかりやすく図表化してもらえませんか」と反論しましょう。
あなたの準備が不十分であろうと、あなたの知識が無かろうとろうと、反論相手に白旗を上げてしまえば、今後、相手は益々調子に乗ってあなたに反論してくるでしょう。そして、あなたはすぐに論破される人間だと周りにも思われてしまいます。更には、相手にあなたを負かした、議論に勝ったと優越感に浸らせてしまうことになります。
そうならないためにも、必要以上に反論してくる人に「私の理解力がないので、申し訳ないのですが今言ったことを図表化していただけませんか」と反論しましょう。
私の経験上、こう言うと、ほぼ全員が黙り込んでしまいます。そして、立場が一気に逆転してしまうのです。相手の逃げ道は、「図表化できません」と言うことしかありませんが、それは絶対言いたくないので、黙り込んだ後苦し紛れに感情的になるしかありません。そうした時には、「○○さんみたいな優秀な方が感情論的になるとはびっくりですし、残念ですね」と冷静に肩透かしをしてあげましょう。
そこまでひどい相手でなければ、「図表化していただければ、問題点や不足部分も明確になり、私も○○さんが理解できなかったところをわかるようになりますので、より良い答えが次回準備できますので」といった程度に留めておくとよいと思います。
相手が自分の言ったことを図表化できないということは、相手も自分の言っていることがわかっていないということです。それを周りに知らしめることができれば、その相手は二度とあなたの立場を崩そうとはしなくなるに違いありません。
【反論術 3】なるほど、いずれにしても
議論が得意な人は、上手く話をかわすスキルに長けています。
上手くかわすだけではだめで、議論を自分が優位に話を進めることができる土俵に持ってこなくてはいけません。
そんな時は、相手に気持ちよく話をさせておいて、話しが終わった後、このように言います。この一言で、相手は自分の意見が肯定されたと思い、満足します。
「なるほど」
そして、続けてこう言います。
「いずれにしましても...」
相手は、もはや「ちょっ、ちょっと待って...」とは言えずに、話しに割り込むタイミングを逃してしまいます。
その後は、自分の優位な立場で、話しをまとめていきます。
例えば、あなたがA案がいいと思っていても、相手に長々とB案を主張させておいて、「なるほど、○○さんが主張されるB案については良くわかりました。いずれにしましてもA案もしっかりと検討させていただき、最終的にメリットの大きい方を選びたいと思います。皆さんよろしいですか?」
と話をまとめます。
後日、相手がいないところで、決定権がある人にA案の良さを個別に説明して下知を取り、「最終的に部長とも相談させていただいた結果、B案も捨てがたかったのですが、今回はメリットがより大きいA案で進めることになりました」
反論していた相手は、自分より職位の人にたてつくわけにもいかず、反論するタイミングも失うことになります。
もしあなたが議論で困った時は、この言葉を使ってみてはいかがでしょうか。「なるほど、いずれにしましても…」
【反論術 4】そろそろ議題に戻りましょう
議論が白熱してくると、時間が延びるだけでなく、話がどんどん脱線していきます。
もしかすると、それは相手が意図的に話を脱線させて、本題に入る時間を短くする策略かもしれません。
そうなると、あなたが反論しようとしたときに「そろそろ時間なので」と、議論が途中で終わってしまいます。
話が本質からずれたと感じたら、すぐに話しの途中でも割り込んで、こう言いましょう。
「ちょっといいですか。話の趣旨が逸れてきているので、そろそろ議題に戻りませんか」
このように言って、逆にあなたが相手の話を途中で遮ってしまいましょう。
そして、「本日、議論すべきは○○についてです。それについて、私は・・・」と話しを切り出せば、話しの主導権を相手から取り返すことができます。
【反論術 5】 回答しない
どんな職場にも、意地悪で回答できない質問をして、人を困らせることに生きがいを感じる輩はいるものです。
私の職場にも何人かいます。私の知らない専門用語を使って数字根拠を質問されたのは一度や二度ではありません。そんな輩には、私はいつも以下のリストから返答するようにしています。
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「一存では答えられない」
「資料が手元にないので答えられない」
「事実の確認がとれていないので回答できない」
「情報の精査ができていないので答えられない」
「正確な情報がないので答えられない」
「詳細を把握できていないため、正確な回答には調査が必要」
「想定外の質問なので、どのような見解をとるかを検討する必要がある」
「事実関係を調べて回答する」
これは、答えが正しいかどうかは問題ではなく、相手を黙らせるための方便です。あなたを困らせようとする質問には、堂々と回答を拒否しましょう。相手に喋らせる、こちらは答えない、これが得策です。
それでもあなたを感情的になって責めてくる相手には、
「あなたも不正確な情報をもとに間違った理解をしたくないでしょう」
「今、分析、調査中です」
「それ感情論ではないですか」
と言って深く立ち入らずに、相手の感情論にコメントは控えて、冷静にかわしましょう。こちらもいっしょになって感情的になると、品位を下げることにもなります。
沈黙は反論以上の効果があります。聞かれたことにすべて答える必要はありません。
もし相手が、こんな人間なら、
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権限を権力と勘違いしている
権力は自分を守るための力と考えている
責任転嫁をする
じっくり話せば分かり合えると思わないほうが良いでしょう。バカな壁は、どんなに頑張っても崩せません。
些細なことでぐちぐち言ってきたり、必要以上にしつこく議論したりする人は、その先のことを考える力がなく、こういう発言をしたら、相手がどのように感じるか具体的に考える能力に欠けています。バカな壁は打ち崩せないと思って、とにかく「回答しない」ことを心がけましょう。
【反論術 6】相手を全否定しない
健全な意見な衝突は、組織にプラス効果をもたらすことが、色々な研究で判っています。Google などの世界的な企業は、健全な意見衝突をむしろ組織内で奨励しているほどです。
今回の反論術のポイントは、
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・総論(一般論)賛成
・各論(具体論)反対
つまり、相手を全否定しない、相手のプライドを傷つけないことです。
相手に反論する時は、総論では凡そ理解できることを最初に伝えておくと相手の戦闘モードが解除されます。その後、一部分の○○に関して客観的事実と反する点を指摘するとよいでしょう。
例えば、「7割が賛成」と相手が主張している時に、しっかりと分母を問いましょう。場合によっては、「3人中2人?母数が明らかに少ないのでは?これでは客観的事実とは言えないのではないですか?」と反論できます。
また、相手の主張が現実的でない時は、主張の必要性と許容性(時間・お金)を分けて、「予算と時間の裏ずけを示してください」と反論できます。
そして、それがクリアになれば賛成できると、「議論の柔軟性を確保しておくと、今後の議論を建設的に続けることが可能となります。
この反論方法は、人間関係を崩したくない相手に反論する時に有効です。
【反論術 7】言いたいことを言う
「言いたいことを言えない」ことが原因で、反論が苦手と言う人もいると思います。そんな時は「動かない事実だけを言う」ようにしてみてください。
客観的証拠があると、言いたいことが言いやすくなります。
客観的証拠とは、数字、統計データです。
自分・組織・企業が作ったデータよりも、第三者による統計データであれば信用度が更にアップします。
話をするをときに、教授、弁護士など、社会的権威がある人からの引用も付け加えるとよいでしょう。
また、他の成功事例なども自分が言いたいことをサポートしてくれます。
その際、くれぐれも古い根拠やデータは使わないようにしましょう。苦し紛れな主張になってしまいます。
その他、言いたいことを言うには、以下も留意しておくとよいと思います。
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・相手を否定したあとは、必ず代替案を出すようにする
(単なる反論ではなく建設的な提案のイメージをアピールする)
・自分なりのキワードを作って、連呼(リピート)する
(聞き手の脳に刷り込む)
・キーパーソンがどのような立場や価値観で判断するかを想像する
(決断者を喜ばせて、味方につける)
【反論術 8】議論の単純化
正義はいつも勝つ!
そんなこと、決してありません。
正しい主張をしても、議論に勝つとは限りません。
では誰が勝つのか?
それは、論が立つ人が勝ちます。
「正直者が損をする」というのは、口下手で論が立たない人が自己犠牲を強いられることを言います。
単に「論が立たない」ということだけで、いつも悔しい思いをする人にも、絶対に議論に負けない「返し」があります。
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① 一言で言うと、どういうことですか?
② 重要なポイントを3つに絞ってもらえますか?
➂ 今の言ったことを例え話にしてもらえますか?
これら3つは、感情的になって話をまくしたててくる人に対しては、特に有効です。
上記3つをスラスラを答えられる人に、私は今まで会ったことがありません。良くて①、どんなに論が立つ人も②まで、➂まではたどり着けません。
そして少しでも相手が話しに詰まったら、チャンス到来です。
「自分の意見をしっかりと整理できたら、また話しましょう」
と、会話を断ち切り、その場を去ります。
そして二度とその人とは話しません。
これが「勝ち逃げ必勝パターン」です。