レビュー
『JUST KEEP BUYING』は、アメリカで大きな支持を得た人気ブログ「Of Dollars and Data」の運営者であり、データサイエンティストでもあるニック・マジューリ氏による、「お金」と「時間」の最適な使い方を導く一冊です。
本書は、巷に溢れるお金の知識や投資のアドバイスとは一線を画し、あくまでデータに基づいた合理的な判断を読者に提供してくれます。難解な金融理論を振りかざすのではなく、誰もが実行できる「再現性の高い戦略」を重視しており、金融リテラシーに自信のない人でも読み進めやすい構成が魅力です。
本書は大きく2部構成となっており、第1部では「貯金力アップ篇」として、生活レベルと支出のバランス、収入増と貯金の戦略、借金や住宅購入といったライフイベントの判断軸が語られます。節約神話を斬り、「スタバをやめても資産は増えない」と喝破する姿勢は痛快です。
第2部「投資力アップ篇」では、インデックス投資、ドルコスト平均法、市場との付き合い方などが展開されます。とりわけ印象的なのは、「安値を待つな」「今すぐ投資せよ」という力強いメッセージ。個別株を避け、長期投資に徹するというアプローチは、投資初心者にも安心感を与えてくれます。
そして、巻末には21の黄金ルールとして、「自動化」「習慣化」「仕組み化」されたお金との付き合い方がまとめられています。「Just Keep Buying(とにかく買い続けろ)」というタイトル通り、本書が貫くのは継続こそが富を築く最も確実な道であるという哲学です。
感想
本書を読んで最も印象的だったのは、感情や直感ではなく「数字とデータ」を重視した視点です。日本では「節約こそ美徳」という価値観が根強くありますが、著者はその考え方に真っ向から異を唱えます。例えば、「収入を上げることのほうが節約よりはるかに影響力がある」という指摘は、働き方や副業に悩む人にとって大きなヒントとなるでしょう。
また、「借金は絶対悪ではない」「家を買うことは必ずしも得ではない」など、常識をくつがえす内容も多く、読み進めるたびに思考がアップデートされる感覚がありました。加えて、「2倍ルール」や「投資はすぐ始めよ」などのアドバイスはシンプルで行動に落とし込みやすく、まさに**「読んだら動ける」本**だと感じます。
投資のセクションでは、「ドルコスト平均法」を信じ切る姿勢が一貫しており、「安く買える日を待つな」「相場の下落は入場料」といったメッセージは、感情に左右されがちな投資家にとって大きな安心材料となります。特に、市場が不安定な時期に読めば、その真価を強く感じることでしょう。
そして、最終章で語られる「一番大切な資産は時間」という結論には、深く頷かされました。結局のところ、お金は手段であって目的ではない。どれだけ自由に時間を使えるかが人生の豊かさを決めるという視点は、資産形成という行為に意味を与えてくれる気がします。
ただし、米国の金融制度や文化に基づいた話も多いため、日本の制度にそのまま当てはめるには補足が必要な場面もあります。とはいえ、根本的な考え方や行動原則は国境を越えて通用するものばかりであり、十分に応用が可能です。
こんな人におすすめ
- 貯金・投資の始め方に迷っている20〜40代のビジネスパーソン
- FIREや資産形成に関心があるが、何から始めればよいか分からない人
- 節約よりも「お金との賢い付き合い方」を学びたい人
- 感情や勘に頼らない、再現性のある投資戦略を知りたい人
総合評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★★★★(データと事例で分かりやすい) |
| 実用性 | ★★★★★(行動に落とし込める戦略多数) |
| 信頼性 | ★★★★☆(米国基準が中心だが応用可能) |
| 再読価値 | ★★★★★(人生ステージごとに役立つ) |
| 総合評価 | ★★★★★(文句なしの一冊) |


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