⭐ レビュー
本書の最大の魅力は、「できない自分を責めなくていい」という温かいメッセージが全編に流れている点です。一般的なマネー本が「計画的に貯金しよう」「無駄遣いをやめよう」と精神論で語るのに対し、本書は発達障害の特性を科学的に説明し、「脳の仕組み」として理解を促します。海外の査読論文を引用しながら、ADHDの人が衝動買いをしやすいのは気のせいではなく、脳の報酬系の働きによるものだと証明している点は画期的です。
著者の岩切氏が実際に経験した失敗談が随所に散りばめられており、「50万円の高級ベッドを衝動買いした」「ボーナスを立ち食い寿司で溶かした」といったエピソードは、当事者にとって「自分だけじゃないんだ」という安心感を与えてくれます。そして、そこから這い上がり、FPとして成功を収めた著者の姿は希望そのものです。
実践面でも優れており、「気合いや根性ではなく仕組みで解決する」というアプローチが徹底されています。クレジットカードやキャッシュレス決済を「お金の苦手さんにぴったりの仕組み」と捉え直す視点や、「推し活」を否定せず続けられる仕組みを作る提案など、当事者の実生活に即したアドバイスが満載です。
特に第4章の制度解説は圧巻です。障害年金、特別児童扶養手当、自立支援医療制度など、知らないと損をする制度を網羅的に紹介。「待っていても誰も教えてくれない」という現実を踏まえ、申請のハードルを下げる工夫が凝らされています。読者からは「ここまで寄り添ってくれるお金の本は初めて」「お金に苦手感のある人は全員読んだ方がいい」という声が続々と届いているのも納得です。発達障害当事者はもちろん、お金に漠然とした不安を抱えるすべての人に勧めたい一冊です。
💡 要点
- お金の困りごとは脳の仕組みのせい – 衝動買いや先延ばし癖は、意思の力や性格の問題ではなく、発達障害特性による脳の働きの傾向。論文でも証明されている科学的事実。
- 根性論ではなく「仕組み」で解決 – 自動積立、キャッシュカードの物理的管理、キャッシュレス決済の活用など、頑張らなくても自然にお金が貯まる仕組みづくりが重要。
- ADHD TAXへの対処 – 延滞金や紛失による再発行費用など、本来払わずに済むはずの「ADHD TAX」を認識し、減らすための具体策を実践する。
- 知らないと損する制度の活用 – 障害年金、特別児童扶養手当、自立支援医療制度など、申請すれば受けられる制度を詳しく解説。待っているだけでは誰も教えてくれない。
- 推し活も肯定する柔軟なアプローチ – 好きなことを我慢するのではなく、続けられる仕組みを作る。生活を豊かにする出費と無駄な出費を見極める視点を提供。
📝 読書の感想
本書を読んで最も印象的だったのは、著者の「当事者に寄り添う姿勢」です。一般的なマネー本では「計画性を持とう」「無駄遣いをやめよう」と当たり前のことが書かれていますが、それができないから困っているのです。岩切氏は自身の失敗経験を赤裸々に語りながら、「できない自分を責めなくていい」と繰り返し伝えてくれます。
特に共感したのは、衝動買いを論文で証明している点です。「またやってしまった」という自己嫌悪ではなく、「これは脳の仕組みなんだ」と理解できると、自分を客観視でき、対策も立てやすくなります。推し活を否定せず、続けられる仕組みを作ろうという提案も素晴らしいと思いました。
また、制度解説の充実度にも驚きました。障害年金や福祉サービスなど、知っていれば人生が変わる情報が詰まっています。当事者だけでなく、発達障害児の親御さんにも必読の一冊です。
👥 こんな人におすすめ
- 発達障害(ADHD/ASD)の診断を受けている人 – 当事者ならではの悩みに特化した内容で、具体的な解決策が見つかります。
- お金に強い苦手意識がある人 – 診断の有無に関わらず、貯金や節約が苦手、計画的にお金を使えない人に最適。
- 衝動買いや先延ばし癖がある人 – 「またやってしまった」という自己嫌悪から抜け出し、仕組みで解決する方法を学べます。
- 発達障害児の親御さん – 障害年金や特別児童扶養手当など、子どもの将来に備えるための制度情報が充実。
- 支援者や家族 – 第6章では、周囲の人がどうサポートすればよいかが具体的に書かれており、適切な距離感を学べます。
⭐ 総合評価
★★★★★ (5つ星中5つ)
発達障害当事者のFPが書いた、唯一無二のマネーガイドです。科学的根拠に基づいた説明、実体験に裏打ちされた共感力、そして実践的な仕組みづくりの提案。三拍子揃った素晴らしい内容で、お金に苦手意識のある全ての人に強くおすすめします。特に、当事者の「生きづらさ」に真正面から向き合い、希望を与えてくれる点で満点評価です。
コメント