レビュー
本書は、元・機関投資家向け日本株セールスの第一人者であり、アジアマネー誌で「日本株No.1セールス」にも選ばれた田口れん太氏が、自身の25年以上の経験と知見を惜しげもなく注ぎ込んだ「個人投資家のための銘柄選び」指南書です。
特に注目すべきは、投資の世界にありがちな「感覚」や「雰囲気」ではなく、「定量指標」と「ビジネスの本質」に基づいて判断するという、極めて再現性の高いアプローチを徹底している点です。著者が取り上げる主要な指標は、ROE・配当利回り・益利回り・PBRという投資の王道ともいえる指標ですが、単に指標を紹介するだけでなく、それらを“どのように読み解き、組み合わせて考えるか”という「投資の思考フレーム」に重点が置かれています。
また、アナリストレポートの活用法や、暴落時の心構え、そして新NISA制度を前提とした戦略的投資法まで、投資初心者から中級者にとって“そのまま使える実践的知識”が随所に詰め込まれています。
この一冊の中で特に光るのは、著者の「市場の外野にならず、当事者として投資に向き合う」姿勢です。企業価値を見極め、根拠ある判断のもとで“自分の頭で選ぶ”投資スタイルを説く内容は、多くの個人投資家にとって「指南書」を超えた“行動の軸”を与えてくれるはずです。
要点
- 投資は「労働+資本」のバランスが鍵。現金だけでは資産は増えない。
- ROE、配当利回り、益利回り、PBRの4指標を理解・活用せよ。
- 銘柄選びでは「業界構造」や「競争優位性」に注目すべし。
- アナリストレポートは「仮説」や「前提条件」を読む姿勢が重要。
- モノ言う株主の時代では、株主還元と経営改善に注目するべき。
- 著者は、データに基づいた中長期投資+暴落耐性のある戦略を実践。
- 新NISAは「長期+分散+定額」で活用するのがベター。
- 投資の本質は「自分で考えて選び、責任を持つこと」。
読後の感想
本書の最大の魅力は、「情報」よりも「視点」を与えてくれる点にあります。よくある投資本では「おすすめ銘柄」や「最新テクニック」に焦点が当たりがちですが、本書は違います。著者は、読者に「どのように考えるか」を徹底的に伝えようとしています。
たとえば、ROEやPBRといった指標は、初心者向けの入門書にもよく登場しますが、本書ではそれらの背景にある企業の経営方針、競争優位性、産業トレンドなど、より本質的な文脈で語られます。そのため、単なる指標の暗記ではなく、「なぜこの企業はROEが高いのか?」といった根本的な問いを持つ習慣が身につきます。
また、アナリストレポートの読み方や、ネット証券の選び方、暴落時の対応策なども紹介されており、実務に役立つ具体的なアクションに落とし込まれている点は、まさに“プロの知見の翻訳書”と言えるでしょう。
一方で、「サザエさんの例え」など、やや軽妙すぎる表現に戸惑う読者もいるかもしれません(Amazonレビューにも指摘あり)。とはいえ、著者の「カブの被り物をかぶるユーモア」同様、堅すぎない語り口は初心者層にも好意的に受け入れられるはずです。
こんな人におすすめ
✅ 新NISAをきっかけに本格的に株式投資を始めたい人
✅ ファンダメンタル重視の銘柄選びを学びたい中級者
✅ アナリストレポートを読んでも活用法がよく分からない人
✅ 感情に左右されず、長期的な視野で投資をしたい人
✅ 成功する個別株投資の「考え方」を身につけたい人
⭐️【評価】
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★★★☆(4.5) 明快な文体と構成、ユーモアを交えつつプロの視点を伝える |
| 実用性 | ★★★★★(5.0) 指標分析、レポートの読み方、投資ルールなど、即活用可能な内容多数 |
| 独自性・深み | ★★★★☆(4.5) 経験に裏打ちされたプロならではの洞察が光る |
| 初心者への配慮 | ★★★★☆(4.0) 基本から解説しつつ、中級者以上にも気づきを与える |
| 全体の満足度 | ★★★★☆(4.5) 投資の本質を理解するための“思考の型”が得られる一冊 |
✅ 総合評価:4.5 / 5.0


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