レビュー
本書は、単なる投資本や自己啓発書の枠に収まらない。「年収1億円超」の富裕層、さらには“兆単位”の資産を動かす超富裕層の“思考回路と行動パターン”を描いたリアルなビジネス・マインドブックである。著者の田中渓氏は、ゴールドマン・サックス証券にて17年間勤務し、投資部門の日本共同統括として4,000億円超の案件に携わった実績を持つ。
彼が接してきたのは、世界20カ国以上の300人超の資産家、王族、投資家たち。その中で得た「凡人には見えない成功の本質」を、本書では極めて平易に、かつ実用的にまとめているのが特徴だ。
内容は6章構成で、富裕層の思考法、時間とお金の使い方、習慣や人間関係の築き方に至るまで、網羅的に解説されている。たとえば、「消費ではなく投資としてお金を使う」「朝4時からの行動で日中の生産性が決まる」「人間関係も戦略資源である」といったアドバイスは、即日実践可能なものばかりである。
特筆すべきは、成功の鍵を「才能や地位」ではなく「誰でも身につけられる習慣と姿勢」に置いている点だ。読者は読み進めるうちに、富裕層のマインドセットに徐々に“感染”していく感覚を味わえるだろう。
読後の感想
この書籍の最大の魅力は、“読者を選ばない”ことだ。扱っているテーマは「億」「兆」といった高額資産だが、語られている内容は極めて実直かつ地に足がついている。
特別なスキルや資産を持たない一般人でも、「思考」「時間管理」「習慣形成」を見直せば、富裕層に近づくことができる——そんな希望と行動のヒントを与えてくれる。
著者が何度も強調するのは、「特別な人間が富を築くのではない。日々の選択と習慣が、未来の資産を決める」ということ。
「自分は凡人だから……」と行動を止めてしまう多くの人にとって、これは非常に励ましになる言葉だ。
また、著者自身が「壮絶なリストラとゼロボーナス」を経験した“普通のサラリーマン”出身であることも、説得力を高めている。単なる成功者の自慢話ではなく、「どうやって考え、何をしてきたのか」が明快に描かれており、読後は自然と背筋が伸び、ノートを開いて計画を立てたくなる。
特に印象的だったのは、「時間の使い方」と「人とのつながり」に関する章だ。目に見えない資産をどう設計するか、それが年収の差、ひいては人生の質を決定づけるという考え方は、あらゆる職種の人に通用する普遍的な教えだろう。
こんな人におすすめ
- ✔ 収入を増やしたいが、何から始めるべきかわからない人
- ✔ 投資に興味はあるが、まずマインドを整えたい人
- ✔ 成功者の思考習慣を実生活に取り入れたい人
- ✔ 時間や人間関係の使い方を根本から見直したい人
- ✔ 30代〜50代のビジネスパーソン全般
評価
項目評価読みやすさ★★★★★
実用性・再現性★★★★☆
内容の深さ★★★★☆
モチベーション喚起★★★★★
独自性・説得力★★★★☆
👉 総合評価:4.6 / 5.0
まとめ
『億までの人 億からの人』は、投資やビジネスの成功者たちの背後にある“見えない努力と設計”を、私たちに惜しみなく教えてくれる実用書です。単なる知識の習得にとどまらず、日々の生活習慣や思考の方向性に“富の種”をまくヒントが詰まっています。
「自分も変われるかもしれない」と思わせてくれる、今読むべき一冊です。


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