レビュー
『あり金は全部使え』は、堀江貴文氏が自身の価値観と人生哲学を凝縮してまとめた、強烈で刺激的な「お金の教科書」です。タイトル通り、「貯金するな、全部使え」というメッセージは、一見すると過激に映るかもしれません。しかしその本質は、「今を生きる力」と「お金の本当の使い方」を問い直す、非常に実用的かつ哲学的な内容となっています。
本書は8つのフェーズ(Phase)で構成され、それぞれが「お金」と「生き方」の関係性を深掘りしています。序盤では、「安定志向は幻想」とバッサリ切り捨て、貯金という行為が実は逃避であると指摘。そのうえで、自分自身や未来への投資が最大のリターンを生むと説きます。
また、仮説を立ててすぐに行動に移すことで、不確実な未来に対応していく「行動型の思考術」や、金で時間を買うという「時間革命」など、現代におけるライフデザイン論としても極めて参考になります。
特筆すべきは、欲望を肯定し、遊びや体験に積極的に投資せよという姿勢です。これは単なる浪費の勧めではなく、「今を生き切ること」が信用を生み、未来の資産にもなるという、堀江氏ならではのロジックです。
元々は2019年に刊行された本書が、2025年に新章を追加して新書化された背景もあり、現代の変化した時代性や読者層によりフィットした内容となっています。特に、これからの不確実な時代を生き抜く若者や、迷いを抱える社会人にとっては、読むタイミングによって人生観すら変えるインパクトを持つ一冊です。
要点リスト(まとめ)
- 「安定志向」は幻想。挑戦が人生を動かす。
- 貯金より「自分」や「体験」への投資が未来を作る。
- 未来は仮説を立てて行動することでしか拓けない。
- 欲望を抑えず「遊び倒す」ことで新しい価値が生まれる。
- 時間はお金より貴重。外注や時短で最大化すべき。
- 節約にとらわれず「攻めの出費」を心がける。
- 信用は最大の資産。長期的な信頼構築がカギ。
- 人生にゴールはない。常に進化し続ける意識を持つ。

読後の感想
『あり金は全部使え』を読んで最も印象に残ったのは、「人生は有限であり、貯金しても死んだら意味がない」という堀江氏の鋭い視点です。お金=価値の保存手段ではなく、「今この瞬間を最大限に生きるためのツール」として再定義することで、多くの読者に「お金の使い方」を根本から問い直させます。
本書を読み進めると、単なるマネー本ではなく、堀江氏が一貫して貫いてきた「実行と体験」の哲学書であることがわかります。実際、「貯める」ことによって自分の行動範囲や可能性が狭まり、「使う」ことで初めて人生の選択肢が広がるという考え方には深く納得しました。
特に印象的だったのは、「欲望のままに遊び倒せ」「ゴールを設定するな」という章です。これらは一見すると反社会的なメッセージにも見えますが、実際は「固定観念に縛られるな」「自分の欲求を原動力にしろ」という、極めて能動的でクリエイティブな生き方の勧めです。
一方で、すべての人にこのスタイルが合うとは限りません。ある程度の経済的基盤がある人でないと、不安になる部分もあるでしょう。しかし、「何のためにお金を持つのか?」という問いを突きつけてくれる点で、すべての読者に価値ある気づきを与えてくれます。
本書は、お金を通じて人生全体の設計を見直すきっかけを与えてくれる、まさに「使う哲学」の書。読み終えたあと、自分の財布の中身だけでなく、人生の方向性まで見直したくなる——そんな一冊でした。
こんな人におすすめ
- 「貯金=正義」という考えに違和感を感じている人
- 会社や社会のルールに縛られた日常から抜け出したい人
- 時間やお金の使い方を根本から見直したい20~40代のビジネスパーソン
- ミニマル思考・FIRE・自己投資に興味がある方
総合評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 読みやすさ | ★★★★☆ |
| 実用性 | ★★★★☆ |
| 刺激・気づき | ★★★★★ |
| 汎用性 | ★★★☆☆ |
| 総合おすすめ度 | ★★★★☆ |


コメント