【管理会計 初級編 その6】ビジネスリーダーに必要な予算管理スキルとは

管理会計【初級】

 

1 ビジネスリーダー必須スキル 予算管理

できるビジネスリーダーは企画力、交渉力、営業力といったスキルに長けています。しかし予算管理力をあまり得意とする人は少ないようです。それはひとえに管理会計の知識が不足しているからです。

ですから、できるビジネスリーダーになるには管理会計は必須なスキルです。
その中の一つ、予算管理はビジネスリーダーの大切なスキルの一つです。

  • 予算管理ってどうすればいいのでしょうか。
  • 予算を管理するには何にきをつければいいのでしょうか。

今回のブログではそんな疑問を解決していきます。

2 予算管理とは

企業経営の一丁目一番地と言えば、予算作成です。
予算とは、事業計画を目標とする売上高、利益、支出毎に数字で表したものです。
予算には3つあります。

【損益予算】
年間の損益計算書をもとに予算編成するのが損益予算です。損益予算では、売上高をまず設定し、そこから売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費等を差し引いて営業利益や当期純利益といった予算を計画します。そのほかに、販売促進費、広告宣伝費、研究開発費、人件費、受取利息、支払利息といった費用や収益の内訳から、販売費・一般管理費、営業外損益なども設定します。

【資金予算】
企業は損益予算の他に資金予算も計画します。営業活動、投資活動、財務活動の3つに分けて、キャッシュフローの動きの予算が資金予算です。

【資本予算】
投資が多い企業は、設備、研究開発、M&Aなどの投資効果に関係する資本予算を計画します。

3 予算のメリット

なぜ予算を作るのでしょうか。それは経営者と実際に予算管理者の双方にメリットがあるからです。

【経営者のメリット】
経営者は、経営環境に合った予算計画であるかを確認し、予算の管理者に権限を任せることで、企業全体の大きな方針に沿った経営に専念できます。

【予算管理者のメリット】
予算の管理者は、全社の目標を達成するために自らが行なうべきことが明確になります。さらに他部門の予算もわかり、業績評価の基準も明確になり、自ら分析し管理できます。

【予算による目標管理の3ステップ】

この3つのステップは毎年ループして来年に続くことから、統制から次につながる計画の部分が特に大切です。

  • 予算を作成していく「計画」
  • 予算を決定のために行われる経営サイドと現場の「調整」
  • 実績の集計段階で、予算と比較・分析し改善を行なっていく「統制」

4 予算の設定方法

予算作成時には、経済環境や市場環境から見て適切な水準か、過去の業績推移からみたて適切な水準か、競合企業の過去業績から見て妥当か、投資家が期待する資本コストから考えて十分な水準か、といった点を考慮しながら、できる限りバランスよくこれらを満たす予算にしていくことが大切です。

予算の設定方法は、トップダウン、ボトムアップ、折衷型の3つがあります。

【トップダウン】
経営トップが予算を決め、現場はそのまま受け入れる「割当予算」です。
トップの経営方針が現場にダイレクトに反映される一方、現場は押し付けられ感を持ち、モチベーションにあまりつながりません。
また現場は予算通りに行かなくても責任を経営者に丸投げし他人ごとになる可能性もあります。

【ボトムダウン】
各部署がそれぞれ予算を計画し、ボトムアップで会社全体の予算をつくっていく「積み上げ予算」です。
現場の意向は反映されますが、会社全体の視点が失われがちで、各部署がやりたいことだけが積み上がり予算が膨れ上がる傾向があります。
それだけバーファーの多い予算になってしまう可能性があります。

【折衷型】
2つともメリットとデメリットがあるため、それぞれのメリットが合わさりデメリットが減らせることを可能とする2つの折衷型予算が望ましいです。
経営者が予算の大枠を決め、その大枠に沿って各現場で予算を積み上げ、予算委員会などで調整していく「折衷型」であれば、組織全体でのコミュニケーションもとれ、現場の予算に対するコミットメントも高くなります。

5 予算の注意点

予算は売上高や利益を生み出していくための計画ですから、簡単に補正することはあまり好ましくありません。
ただ大きな経済環境の変化が起こり、計画の達成は明らかに出来ない場合は、未達成とわかっている予算計画をそのまま維持する意味は無くなりますので、予算を補正します。
補正時期は年度の半分が過ぎたあたりでしっかりと計画通り進捗しているか確認をした後の判断になります。

また計画以上の実績となると判れば、株主や社員のインセンティブも検討してみることも、将来の会社の発展につながります。
投資家や社員ののモチベーションが高まります。

売上高や利益予想は、現場が受け入れられるギリギリの目標にすれば、現場は100%以上の力を発揮しなければという意識を持ちます。
未達成部分は、来期の動機づけや目標レベルにもなり得ます。
明らかに達成不可能な予算は現場のモチベーションを失わせ、経営者批判に繋がる一方で、簡単に達成できる予算は、現場に緊張感がなくなり。その余力で本来より高い業績が達成できるのにその分を逃してしまうことになります。
厳しいようでも一生懸命やれば達成できる予算を作成することが重要です。

6 予算管理の問題点を解決する超予算モデル

超予算モデルは、ビジネス環境の変化に適応するためのものです。特に、不確実性(リスク)が高い事業を行なっている企業が導入すると効果があります。
超予算モデルBeyond Budgeting Modelは、以下の4つの予算の問題を解決します。

  • 予算策定に膨大な時間とコストをかけても、それ以上の価値を生まない。
  • 予算は年度が進むにつれた環境変化に対応できない。
  • 経営者によってはインセンティブを払いたくないために予算数値がゆがめられる可能性がある。
  • 予算を達成するために短期的なつじつま合わせの経営となる可能性がある。

超予算モデルの要点は以下の通りです。

  1. 【目標設定】
    客観的かつ意欲的な目標設定になっていることを部署全員で共有し各部署がベストパフォーマンスによって生み出せる成果に設定します。
    その際、目標設定は評価や報酬と切り離します。そうすることで目標が社内政治やモチベーションの低下などによって歪んだ目標ではなくなります。
  2. 【評価と報酬】
    評価や報酬は、事前に決めた固定的な数値ではなく、同業他社や過去の業績をベンチマークにして、環境の変化を反映するようにします。
  3. 【計画策定】
    一年以上のローリング方式の計画も持ちながら、単年度の事業計画を作成します。それによって環境変化に対応した計画を策定でき、計画の更新頻度と計画の精度を高めます。
  4. 【資源配分】
    KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を活用し、環境変化に対応した資源を再配分して無駄をなくします。
  5. 【調整】
    組織の縦割りの弊害をなくし、スムーズ顧客のニーズに対応するための社内調整を行います。
  6. 【業績評価】
    ビジネス変化に適応するための、ベンチマーキング、Kバランスト・スコアカード、ABCやABMといった管理会計の考え方から評価します。

7 まとめ

  1. 予算には、損益予資、資金予算、資本予算があります。
  2. 予算は、売上高、利益、支出等を計画し、ビジネスを実行するための指標となるものです。
  3. 予算は、経営者だけでなく全社員が企業の経営状態や経営方針そして経営目標を達成するためにすべきことを共有・再確認するためのものです。
  4. 予算管理には、予算を編成する「計画」、経営陣と各部署の「調整」、業績改善になる内部の「統制」の3ステップがあります。
  5. 予算編成は、トップダウン、積み上げ型、折衷型があります。
  6. 予算は簡単に補正せず、現場が受け入れる範囲で最も厳しく設定するべきです。
  7. 超予算モデルとは、予算管理の問題点を解決する方法です。例えば、変化に適応するための、ベンチマーキングをするKPI、ABCやABMといった管理会計の考え方を予算に活用します。