大学教員選考のカラクリ、全て教えます!
note記事「【社会人が大学教授になる方法】大学教員選考のカラクリ、全て教えます!」(https://note.com/mirokukatsu/n/n51321e7e067a)では、
1 私が大学教授になるまで
2 大学の人事採用のプロセス
3 大学教授になるための大学院選び
について、解説しました。
このブログでは、「社会人が大学教授になる方法」を更に深堀して、
4 社会人が実務家教授になる条件
5 高いハードル
6 大学に応募してくる社会人は、こう見られている
7 社会人が抱く大学教授という幻想
8 大学教員採用のカラクリ
の順番で、解説します。
もし
1 私が大学教授になるまで
2 大学の人事採用のプロセス
3 大学教授になるための大学院選び
をまだ読まれていない方は、まずはこちら👇をお読みください。
https://note.com/mirokukatsu/n/n51321e7e067a
4 社会人が実務家教授になる条件
社会人が大学教授になるのは、とてもハードルが高く簡単なことではありません。なぜなら「実務家教員」の公募が少ないからです。それでも大学教員を目指すのであれば、以下に列挙した業績を積んでおきましょう。
【1社会経験】
部署がコロコロと変わっていると専門性がないと思われます。一つの部署でプロフェッショナルなスキルを積んだことがわかる社会経験が最低10年は必要です。
【2 学位】
博士号かそれと同等の学術レベルでの研究実績が必要です。在学中に、査読論文や学会発表そしてTAなどの業績を積んでおきましょう。
【3 研究教育業績】
学術的な著著、査読論文、計10本、学会発表10回(英語による発表も)、非常勤講師の教育歴も必要です。
【3 海外経験】
海外の大学院や研究所に留学し、海外での研究業績があるとプラスです。
【4 社会活動】
学会や研究所などでの活動や役職があると、大学の雑務もこなせるスキルをアピールできます。
最低、これぐらいの業績が無いと、社会人が大学教授になることは厳しいと考えておいた方がよいでしょう。
5 高いハードル
最近、社会人の方々から「大学教授になるにはどうしたらいいですか」という質問が公私ともに増えています。
彼らは、一流企業でバリバリと働いているエリートのビジネスマンは、結構簡単に大学教授になれると思っているようです。
ひと昔前までは、大学教員になるための就活は、こんな感じでした。
1 大学院修士課程と博士後期課程を修了
2 非常勤を何校も掛け持ち、10~20万円の生活費を稼ぐ
3 奥さんにパラサイトして、査読論文・学会発表の実績を作る
4 専任教員の公募に応募し続ける
5 運が良ければ、Fランクの大学の専任教員に採用
ただ、これで就活は終わりではありません。
6 Fランク大学は給与、研究費は低く、雑務も多く、辞めたくなる
7 学会でコネを広げ、教育研究暦にも磨きをかけ、5年ほど精進する
8 自分が転職したい大学人と人間関係を築く
9 研究業績をパワーアップした後に、人間関係ができた大学に再度応募
10 40歳代前半で、経営が安定し知名度の高い大学に滑り込む
これが、大学教員になるための一般的な就活でした。
ちなみに私の場合は、Fランク大学で36歳の時に准教授、39歳で教授、42歳の時に1500万円程度の給与がもらえる大学に転職できました。
6 大学に応募してくる社会人は、こう見られている
今、私は、某大学で人事委員会に属しており、書類選考や面接などを担当しています。人事委員会の業務を通じて最近感じることは、大学教員になりたい人のバックグラウンドが変わってきたということです。特に、10年ぐらい前に「実務家教員」というカテゴリーや「課程博士」ができてからは、大学教員になりたい人たちのレベルが下がった気がします。
大学教授を目指して応募してくる人は、採用する大学側にはこのように見えています。
・課程博士の人は、とにかく学術的な鍛錬が足りない。
昔は博士号は簡単にもらえませんでしたが、今は25歳ぐらいで博士になれます。それほど、博士号の希少価値は無くなっていると言えます。そのため、博士論文のレベルも低く、論理の組み立てや考察も浅いのが実情です。
厄介なのが、「実務家教員」として応募してくる、社会人たちです。
「博士号がなくても実務経験があれば自分も大学教授になれる」と、希望を抱くエリートビジネスマンは、とにかくプライドが高くて大学教授の生活に幻想を抱いています。この時点ですでに大学が求める労働力とギャップがあります。
7 社会人が抱く大学教授という幻想
課程博士を修了した人は、アカデミックの厳しさは体験しているので、大学教授へのあこがれや幻想はそんなに持っていません。
彼らはとにかく安定した給料と専任という立場(社会的ステータスと健康保険)が欲しい人たちで、大学教員になりたい動機はとても現実的です。
彼らが大学教授になるには、コツコツと学術的鍛錬を積んで、立派な教育研究業績を積み上げながら、ひたすらチャンスを待つしかありません。運が良ければ専任になれるでしょう。
ダメでも万年非常勤ぐらいにはなれますので、あとは働いてくれる奥さんにパラサイトしながら主夫として生きてけば、自分がやりたい研究は続けられます。なので、稼ぎの多い奥さんと結婚することを勧めます。
問題なのは、実務家教員になりたいビジネスマンです。彼らは、大学教授になって周りからスゴイと思われたい承認欲求が強いタイプが多いです。
彼らの大半は、出世コースから外れて、元上司や会社を見返してやろうといった間違った動機を抱えた早期退職者です。それは履歴書をみれば、一目瞭然です。彼らの多くは、会社にいた時の最後の役職が、課長や副部長といった中途半端に終わっている50代です。
彼らが提出する履歴書は、研究内容や実務経験がとても抽象的です。要約すると、「経営に携わっていました」「会社でこんなことしていました」と、とにかく何の専門性があって、大学にとって彼らを採用した時にどういったメリットがあるか不明です。
更に彼らは、研究と授業だけしていればいいと考えています。なので、志望動機には、教育研究以外の雑務(入試問題作成、高校訪問、各委員会など)について意欲的に取り組む姿勢が全く書かれていません。
こういった点からも、彼らは大学業務に関して浅はかな知識・情報しかなく、大学に転職するための下調べをほとんどしていなので、本気度が伝わりません。そんな彼らは、教授職をパラダイスのように勘違いしています。
例えば、こんな勘違いです。
・実務家教員ならすぐに教授になれる
・給与は最低でも1000万円以上、研究費は100万円以上はもらえる
・出張は、公費で新幹線はグリーン車、飛行機はプレミアムクラスに乗れる
・周りの人からリスペクトされる
・社会的扱いが良くなり、上級国民になれる
このような浅はかな理解と勘違いしたモチベーションを抱いたビジネスマンが、実務家教員を目指してたくさん履歴書を送ってきます。
普通のサラリーマン、ましてや中途半端なキャリアで終わったサラリーマンが大学教員になれるなら、世の中サラリーマンの誰もが、大学教員になれます。残念ながら、大学はそんなに甘いところではありません。
実際に、人事委員会の教授たちは、そういう社会人が堂々と応募してくることにとても抵抗感をもっています。
8 大学教員採用のカラクリ
とは言え、どんなに動機が不純でも大学教授になりたいと切望して頑張っている社会人の方々に、「諦めてね」と言うのも酷な話です。もちろん、100%大学教授になれないということではありません。最低でも、上記で述べたような業績を積んで、あとは人間関係(コネ)をしっかりと作れば、可能性はあります。
今では、他にもたくさん大学教授になる方法について書かれたハウツー本が出版されていると思いますが、「簡単に大学教授になれますよ」といった本は、あまり信用しない方が良いかもしれません。
大学教授を目指す社会人の皆さんが、正しい理解と認識を持って応募することこそ、夢が叶う近道だと思います。ここに述べた情報が、大学教授になるための有益な情報になれば幸いです。
以下に大学教授に関する本をいくつかリストアップしておきます。
もし大学教授について更に詳しく知りたい方におススメです。
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